カテゴリー: 防護・安全用品

  • 南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で

    南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で

    第三話 「黒い壁」

    ※この物語はフィクションですが、南海トラフ巨大地震の最新想定(2025年3月公表)を参考に、実際に起こり得る災害医療の状況を描いています。またこの第3話には、津波の襲来など緊迫した災害描写が含まれます。

    1 海が消えた

    「……海が……ない。」

    誰も答えなかった。

    窓の外。

    さっきまでそこにあった海が、異様なほど遠くまで後退している。

    海底がむき出しになり、船が横倒しになっている。

    道路には、人が集まり始めていた。

    「何が起きてるんですか……?」

    新人看護師の優菜が呟いた。

    美咲は窓から目を離さなかった。

    「津波……。」

    「でも、津波って海が引いてから来るんですよね?」

    美咲は一瞬だけ黙った。

    「……必ずじゃない。」

    「え?」

    「津波は、海が引いてから来るとは限らないの。」

    津波は、地震によって海底が大きく動き、海面そのものが大きく変動することで発生する。

    最初に海が押し寄せる場合もある。

    だから、

    『海が引いたら逃げる』では遅い。

    強い揺れを感じたら、

    海を見る前に逃げなければならない。


    2 「見えてからでは遅い」

    美咲のスマートフォンが鳴った。

    画面には、

    《大津波警報》

    の文字。

    「警報……。」

    優菜の顔から血の気が引く。

    美咲は窓の外を見る。

    遠くの海面に、黒い線が見えた。

    最初は、ただの水平線に見えた。

    しかし――

    違った。

    少しずつ、大きくなっている。

    「……あれ、何?」

    誰かが呟いた。

    美咲は答えなかった。

    黒い線は、横へ広がりながら、こちらへ近づいてくる。

    津波は沖合では非常に速く進む。

    そして浅い海に入ると速度を落としながら、波高が高くなっていく。

    だから、津波を見てから走って逃げるのでは間に合わない。

    気象庁も、強い揺れや長い揺れを感じた場合は、津波警報を待たずに避難を開始するよう呼びかけている。


    3 病院を捨てる

    「屋上へ!」

    院長の声が響いた。

    「歩けない患者から先に!」

    看護師たちが一斉に動き始める。

    点滴。

    酸素ボンベ。

    人工呼吸器。

    担架。

    車椅子。

    一つひとつ、患者と一緒に運ばなければならない。

    しかし、エレベーターは止まっている。

    階段しかない。

    「この人、人工呼吸器が外せません!」

    「バッテリー確認!」

    「残量62パーセント!」

    「急いで!」

    美咲は患者のベッドを押した。

    重い。

    一人では動かせない。

    「誰か手を貸して!」

    二人の看護師が駆け寄る。

    三人でベッドを押す。

    階段まで、あと十メートル。

    そのときだった。


    4 第一波

    津波襲来の場面画像

    ゴォォォォ……。

    地面の奥から、低い音が聞こえた。

    「……何?」

    次の瞬間。

    窓ガラスが、一斉に震えた。

    ドンッ!!

    病院の外で、何か巨大なものが衝突した。

    窓から見えた街が、一瞬で変わった。

    道路を、海水が走っている。

    車が浮いた。

    電柱が倒れた。

    建物の間を、濁った水が猛烈な勢いで流れていく。

    「津波が来た!」

    誰かが叫んだ。

    美咲は患者のベッドを押しながら、振り返った。

    窓の向こう。

    そこには、さっきまで道路だった場所がなかった。


    5 津波は「一度」ではない

    「もう終わった……?」

    優菜が呟く。

    美咲は首を振った。

    「まだ。」

    「まだって……?」

    「津波は、一回だけじゃない。」

    津波は何度も繰り返し襲ってくる。

    そして、最初の波が一番大きいとは限らない。

    地形によって波が反射したり、複数の波が重なったりすることで、後から来た波の方が高くなることもある。

    だから、第一波が過ぎたからといって、避難を終えてはいけない。

    警報が解除されるまで、戻ってはいけない。


    6 屋上

    「あと少し!」

    階段を上る。

    患者の呼吸器を確認する。

    「大丈夫……。」

    美咲は患者の手を握った。

    「もう少しだからね。」

    そのとき、下の階から、凄まじい音が響いた。

    バキッ。

    ガシャーン!!

    何かが壁にぶつかった。

    建物全体が、また揺れる。

    優菜が振り返った。

    「……水が、上がってきてます。」

    階段の下。

    暗い廊下の向こうから、濁った水が、少しずつ侵入していた。

    「急いで!」

    美咲は叫んだ。

    「屋上へ!」

    浸水場面の画像

    7 届いた一通のメッセージ

    屋上の扉が開いた。

    強い風が吹きつける。

    患者たちを安全な場所へ移動させる。

    美咲はその場に座り込んだ。

    息ができない。

    手が震えている。

    そのとき、スマートフォンが振動した。

    一通のメッセージ。

    『通信確保。近隣の避難施設も開設。』

    誰が送ったのかは分からない。

    それでも、情報が届いた。

    美咲は、ポケットWiFiを見つめた。

    小さな端末だった。

    けれど、この瞬間には、とても大きな意味を持っていた。

    「……つながってる。」

    その言葉を聞いた優菜が、静かに頷いた。

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    8 南海トラフが怖い理由

    南海トラフ巨大地震が恐ろしいのは、単純に「大きな地震だから」ではない。

    強い揺れ。

    津波。

    建物の倒壊。

    火災。

    停電。

    断水。

    通信障害。

    交通網の寸断。

    そして、それらが広い地域で、同時に起きる可能性がある。

    2025年3月に公表された内閣府の新しい被害想定では、最大クラスの南海トラフ巨大地震について、従来の想定を更新し、地震・津波による人的・物的被害やライフラインなどの被害が改めて算定された。

    つまり、

    「地震が起きたら救助を待つ」

    だけではなく、

    救助が来るまでの時間をどう生きるか。

    そこまで考えておく必要がある。


    9 通信を「備える」ということ

    災害時、電気や水を備えることは、もちろん重要だ。

    しかし、もう一つ忘れてはいけないものがある。

    通信。

    家族の安否を確認する。

    避難場所を知る。

    道路の状況を確認する。

    自治体からの情報を受け取る。

    医療機関同士で情報を共有する。

    それらには、通信手段が必要になる。

    今回の物語に登場したのは、プレミアムチャージWiFi

    端末を買い切り、必要なときにギガをチャージして使うタイプのモバイルWiFiだ。

    月額契約や返却を前提とせず、普段から持っておき、必要なときに使うという選択肢がある。

    国内では4大キャリアの回線に対応するクラウドSIMを搭載した機種があり、SIMカードを別途用意せずに使えるのも特徴。

    災害時の通信を「これだけで必ず確保できる」と保証するものではない。

    それでも、普段から通信手段を一つ増やしておく。

    その考え方自体が、災害への備えになる。

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    10 そして、二度目の揺れ

    屋上から街を見下ろす。

    街は、水の中に沈んでいた。

    遠くでサイレンが鳴っている。

    誰かが泣いている。

    誰かが、家族の名前を呼んでいる。

    美咲は空を見上げた。

    まだ終わっていない。

    その瞬間――

    ゴゴゴゴゴ……。

    足元から、再び地鳴りが響いた。

    「……また?」

    美咲が立ち上がる。

    次の瞬間。

    屋上の床が、大きく揺れた。

    患者のストレッチャーが動く。

    「押さえて!」

    全員が駆け寄る。

    そして、海の向こう。

    一度引いたはずの水が、再び、ゆっくりと動き始めていた。

    美咲は、その先を見つめた。

    「……まだ来る。」

    (第四話へ続く)

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    南海トラフ巨大地震サムネイル画像
  • 南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で

    南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で

    第二話 「途絶えた世界」

    ※この物語はフィクションですが、南海トラフ巨大地震の最新想定(2025年)を参考に、実際に起こり得る災害医療の状況を描いています。

    1 終わらない揺れ

    病院はまだ揺れていた。

    棚から落ちた医療器具が床を転がり、非常灯だけが白く廊下を照らしている。

    「余震……ですか?」

    新人看護師・優菜が震える声で尋ねた。

    美咲は患者のベッドを押しながら首を横に振る。

    「まだ終わってない。」

    「南海トラフ巨大地震なら……ここから始まるかもしれない。」


    2 南海トラフ巨大地震とは

    階段を上りながら、美咲は静かに話し始めた。

    「南海トラフっていうのは、日本の太平洋側にある長い海底の溝のこと。」

    「その下では、フィリピン海プレートが陸のプレートの下へ、毎年少しずつ沈み込んでいるの。」

    優菜は黙って聞いている。

    「長い年月をかけて、ものすごい力がたまる。」

    「そして限界を超えた瞬間、一気に動く。」

    「それが南海トラフ巨大地震。」

    また病院が揺れた。

    天井の照明がきしみ、どこかでガラスの割れる音が響く。


    3 なぜ日本最大級の災害と言われるのか

    「普通の地震は、一つの断層が動くことが多い。」

    「でも南海トラフ巨大地震は違う。」

    「震源域は静岡県沖から宮崎県沖まで広がる可能性がある。」

    優菜は息をのんだ。

    「そんなに広いんですか……。」

    「だから病院だけじゃない。」

    「消防も、警察も、自衛隊も、自治体も、同時に被災する。」

    「助けに来ないんじゃない。」

    「助けに来られない。」

    その言葉が、廊下の静けさに重く沈んだ。


    4 病院という孤島

    院内放送が流れる。

    「断水を確認。」

    「通信障害発生。」

    「エレベーター復旧見込みなし。」

    外の様子は誰にも分からない。

    救急車も来ない。

    家族とも連絡が取れない。

    病院は、まるで街から切り離された島になっていた。

    美咲はスマートフォンを見る。

    圏外。

    何度かけ直しても、

    『通信できません』

    その表示だけが繰り返される。

    「災害対策本部とも連絡が取れません!」

    ナースステーションに緊張が走った。

    そのときだった。

    事務職員が小さなケースを抱えて駆け込んできた。

    「防災備蓄の通信機器です!」

    ケースの中に入っていたのは、

    買い切り型のチャージ式ポケットWiFiだった。

    普段は倉庫で保管されているだけの端末。

    月額契約はなく、

    必要なときだけ通信容量をチャージして使えるよう備えていた。

    「ギガは残っています!」

    電源を入れる。

    数十秒後。

    「つながった!」

    誰かが叫んだ。

    病院中の空気が変わる。

    災害対策本部から届いた最初の情報。

    『巨大津波警報発令。沿岸部は直ちに高所へ避難してください。』

    たった一文。

    それだけで病院全体が動き始めた。

    美咲は小さく息を吐いた。

    水がなければ生きられない。

    食べ物がなければ動けない。

    でも――

    情報が届かなければ、命を守る判断すらできない。

    通信は、

    人と人をつなぐだけではない。

    命と命をつなぐものなのだ。

    電話繋がらない看護師の画像

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    5 次に来るもの

    「揺れだけなら、まだいい。」

    ベテラン看護師がぽつりと言った。

    優菜が振り返る。

    「え……?」

    「南海トラフで本当に怖いのは、このあと。」

    病院は海から数キロしか離れていない。

    もし巨大津波が来れば、避難できない患者もいる。

    静まり返った病棟。

    聞こえるのは、非常灯のかすかな電子音だけ。

    その静けさが、かえって恐ろしかった。

    6 赤い海

    津波を見る看護師たちの後ろ姿画像

    窓の外から、誰かの悲鳴が聞こえた。

    「海だ!!」

    美咲たちは窓へ駆け寄る。

    遠くの水平線。

    海が、

    異様なほど遠くまで引いている。

    「……嘘。」

    美咲の背中を冷たい汗が流れた。

    教科書でしか見たことのない光景。

    海が、

    巨大なエネルギーをため込むように、

    静かに姿を変えていた。

    その静寂の向こうから、

    誰も見たことのないものが近づいてくる。

    災害で止まるのは電気だけではありません。通信が途絶えると、避難情報や家族との連絡も難しくなります。月額不要・買い切り型で、必要なときだけギガをチャージできるポケットWiFiという備えも選択肢の一つです。

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    南海トラフ巨大地震サムネイル画像
  • 【南海トラフ巨大地震:連載第1話】

    【南海トラフ巨大地震:連載第1話】

    南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で(看護師・美咲)

    ※この物語はフィクションですが、南海トラフ巨大地震の最新想定(2025年)に基づき、実際に起こりうる災害医療の状況を描いています。

    1 午後2時14分の揺れ

    午後の病棟は、いつも通りの静けさに包まれていた。

    看護師・美咲は、点滴交換のために患者のベッド脇に立っていた。 窓から差し込む光は柔らかく、遠くで子どもの泣き声が聞こえる。

    「今日は天気いいねえ」 患者の女性が笑った。

    美咲も笑い返した。

    その瞬間だった。

    床が跳ね上がり、壁が軋み、天井の照明が激しく揺れた。

    「地震です!」 誰かの叫びが響くより早く、停電。

    病院全体が、深い闇に沈んだ。

    非常灯だけが、ぼんやりと廊下を照らしていた。


    2 止まる機械、鳴り続けるナースコール

    「人工呼吸器が止まりかけてる!」

    「ナースコール全部鳴ってる!」

    「エレベーター停止! 階段で搬送するしかない!」

    暗闇の中、警告音が重なり合い、病院は一瞬で戦場になった。

    美咲はヘッドライトをつけ、人工呼吸器の再接続に走った。

    患者の胸が上下していない。

    「大丈夫、大丈夫だからね」 声をかけながら、手は震えていた。

    停電した病院は、想像以上に静かで、そして恐ろしい。

    機械の音が消えるということは、 “命を支える音が消える”ということだった。

    看病するナースの画像

    3 水が止まる、情報が途絶える

    「水道、止まってます!」

    「スマホ、圏外です!」

    「救急車が外で渋滞してる!」

    次々と飛び込んでくる報告。

    美咲はナースステーションに戻り、深呼吸した。

    手洗いができない。 患者の処置が続く。 感染症のリスクが跳ね上がる。

    そして、ふと気づいた。 自分は朝から何も食べていない。


    4 安心米のパッケージ

    「美咲さん、これ……」 同僚の沙耶が、ロッカーの奥から小さな白いパッケージを取り出した。

    安心米。

    病院の備蓄棚に、いつの間にか補充されていた非常食。

    「水でも戻せるから、患者さんにも使えるって、事務の人が言ってた」 沙耶は言った。

    美咲は受け取ったパッケージを見つめた。

    ナースコールは鳴り続けている。

    でも、倒れたら誰も助けられない。

    「……少しだけ食べるね」

    非常用の給水タンクから少しだけ水を注ぐ。

    ふわりと、米のやさしい香りが立ち上がった。

    「こんなときに、食べ物の匂いって……」 自分でも驚くほど、涙が出そうになった。

    その一口が、彼女をもう数時間、前へ進ませる力になった。

    もしもの時に、備えて安心。安心米


    5 《緊急津波警報》

    その直後だった。

    美咲のスマホが突然、けたたましい音を鳴らした。

    画面には赤い文字が点滅している。

    《緊急津波警報》 最短2分で到達の可能性

    美咲の心臓が止まりそうになった。 病院は海から数キロ。 避難できない患者が何十人もいる。

    「……嘘でしょ……」

    廊下の奥で、誰かが泣き叫んだ。

    別の看護師が「上階へ! 上階へ!」と叫んでいる。

    美咲はヘッドライトを握りしめた。 安心米の温もりが、まだ手に残っている。

    避難を叫ぶナースの画像

    6 地鳴り

    そのときだった。

    病院の床が、低く、重く、うなるように揺れた。 地鳴り。 遠くで何か巨大なものが崩れる音がした。

    美咲は息を呑んだ。 「来る……」

    次の瞬間、病院全体が再び大きく揺れた。

    もしもの時に、備えて安心。安心米


    我慢サムネイル画像
  • X-DAY 第6話

    X-DAY 第6話

    LEVEL -3

    東京湾

    午後11時56分。

    誰も、地下へ続く階段を見つめたまま動かなかった。

    暗闇。

    ライトの光は、十数段先で闇に飲み込まれる。

    底が見えない。

    静かだった。

    静かすぎた。

    地上では、波の音がかすかに聞こえる。

    しかし、地下からは何一つ聞こえない。

    風もない。

    空気すら止まっているようだった。

    地下に伸びる階段を下りる画像

    「……行こう。」

    最初に歩き出したのは美咲だった。

    ヘルメットのライトが、階段を白く照らす。

    一段。

    また一段。

    靴音だけが響く。

    カン……

    カン……

    コンクリートの反響音ではない。

    どこか柔らかい。

    「音が違う。」

    美咲が足を止める。

    ライトを床へ向けた。

    階段はコンクリートではなかった。

    表面には、黒いゴム状の素材が敷かれている。

    防振材。

    大型施設でしか使われないものだった。

    「倉庫の地下じゃない。」

    直樹が低く呟く。

    「こんな設備、見たことがない。」

    壁へライトを向ける。

    配管。

    電源ケーブル。

    さらに、太い光ファイバー。

    何十本も束になって、地下へ伸びている。

    「通信設備……?」

    拓也が思わず声を漏らした。

    さらに降りる。

    二十段。

    三十段。

    四十段。

    まだ終わらない。

    「深すぎる。」

    美咲が振り返る。

    地上の光は、もう小さな点になっていた。

    突然、

    壁に白いプレートが現れる。

    LEVEL -1

    全員が立ち止まる。

    「まだ一階……?」

    さらに降りる。

    空気が変わった。

    ひんやりしている。

    しかし、地下特有の湿気がない。

    乾いている。

    古いコンクリート。

    金属。

    機械油。

    そして、雷雨の前に感じる、微かなオゾン臭。

    「換気が動いてる。」

    美咲が天井を照らす。

    巨大なダクト。

    内部から、ごく弱い風が流れていた。

    「電気が生きてる。」

    直樹の声が少し震えた。

    「誰が管理してる。」

    誰も答えられない。

    その時だった。

    拓也の胸ポケットが震えた。

    プレミアムチャージWiFi。

    通信ランプ。

    一本。

    二本。

    三本。

    四本。

    最大。

    「あり得ない。」

    拓也は立ち止まる。

    「地下へ降りるほど、通信が強くなる。」

    「普通は圏外になる。」

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    画面を見る。

    表示されたネットワークは一つ。

    UNKNOWN NODE

    接続可能

    「接続するな。」

    直樹が即座に言った。

    「何か分からない。」

    「ウイルスかもしれない。」

    美咲も頷く。

    「未知の通信を受けるのは危険。」

    少女だけが、階段のさらに下を見つめている。

    「違う。」

    静かな声だった。

    「向こうが待ってる。」

    「誰が。」

    少女は答えない。

    ただ、暗闇を見ていた。

    再び歩き出す。

    やがて、巨大な鋼鉄製の扉が現れた。

    高さ三メートル。

    分厚い防爆扉。

    表面には傷一つない。

    横には、電子認証パネル。

    しかし、電源は落ちている。

    その横に、もう一枚。

    白いプレート。

    LEVEL -3

    「ここだ。」

    美咲が息を呑む。


    その瞬間。

    扉の向こうから、低い音が響いた。

    ゴン。

    全員が固まる。

    もう一度。

    ゴン。

    今度は少し近い。

    何かが動いた。

    巨大な。

    重い。

    金属の塊のような音だった。

    拓也の端末が震える。

    画面が切り替わる。

    UNKNOWN NODE

    通信要求

    「来る。」

    少女が呟く。

    拓也は画面を見つめる。

    数秒迷った。

    そして、接続を押した。

    通信中……

    ……

    ……

    ……

    接続完了

    画面は真っ黒だった。

    数秒後。

    白い文字だけが現れる。

    WELCOME

    全員が息を止める。

    さらに、二行目。

    WE HAVE BEEN WAITING.

    (私たちは待っていた。)

    突然、画面が乱れる。

    ザーッ……

    UNKNOWN NODE

    AUTHORIZATION REQUIRED

    その下には、

    二つだけ。

    YESかNOを選択させる画像

    YES

    NO

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    地下の奥から、

    再び振動が響く。

    ゴン。

    ゴン。

    今度は、明らかに近い。

    画面の右上に、数字が表示された。

    59

    58

    57

    ……

    「カウントダウン……。」

    拓也が呟く。

    美咲が首を振る。

    「違う。」

    「選択の制限時間。」

    「YESを押したら。」

    直樹が息を飲む。

    「何が起きる。」

    誰にも分からない。

    「NOを押したら?」

    沈黙。

    それも分からない。

    少女だけが、拓也を見つめる。

    「選んで。」

    その声は、お願いではなかった。

    知っている者の声だった。

    数字は止まらない。

    10

    9

    8

    ……

    地下の振動は、さらに近付く。

    ゴン。

    ゴン。

    ゴン。

    拓也の指が、ゆっくりと

    YES

    へ伸びる。

    3

    2

    1

    画面が白く発光した。

    UNKNOWN NODE

    AUTHORIZATION ACCEPTED

    その瞬間。

    重さ数十トンはある防爆扉が、ゆっくりと、音もなく開き始めた。

    地上では決して聞こえなかったはずの機械音が、長い眠りから目覚めるように地下全体へ響き渡る。

    誰も知らない。

    この扉の向こうにあるものが、人類の未来を変える最初の一歩になることを。

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    X-DAYシリーズサムネイル画像
  • 我慢の限界点

    我慢の限界点

    ワタシの場合

    生きていると色んなことがあります。良いことばかりではありません。多分、この記事を読まれている方のほとんどが、「悪いことの方が多いよ」と思っているのではないでしょうか。

    認識の問題だって

    身に起きた悪いことも、認識・・・受け止め方一つで良いことに変わるんだって。へえ、と思う。そんなふうに達観するために、いったいどんな「修行」を積まなければならないのだろう。

    例えば、通りすがりのヤンキーに突然、ぶん殴られたとする。
    さて、このあまりに非道な行為に対し、われわれは、いったいどんな「認識」をもって立ち向かうべきなのか。

    いやー。ムリムリムリ

    例えばワタシがヒクソン・グレイシー並に(古っ)強かったら、通りすがりのヤンキーにぶん殴られた瞬間、いや、ヤンキーがその挙動に入った瞬間、タックルして馬乗りパンチを食らわすだろう。もう、ボコボコである。なぜならば、自分を守らなければならないのだから仕方がない。問答無用に、馬乗りパンチという最終手段にいきなり打って出るのだ。つまり認識どころの騒ぎではない。

    修行不足と言われても・・・

    やはり誰しも我慢の最後の点=我慢点というのはあるのではないだろうか。もちろん、修行の行き届いた方たちは別だ。その他大勢、おそらく人類の9割の人々は自分なりの我慢点を持っている。

    その我慢点を越えた瞬間、その人は自分自身ではなくなる。怒り、泣き、喚く・・・あらゆる手段を使って感情を爆発させ、今目の前にある危機に対し、最後の手段に打って出るのだ。

    もちろん、そうなったらだいたい良いことはない。

    例えばサラリーマンが上司に対し、そんな態度に出ようものならチーン、ゲームオーバーだ。ただ馬乗りパンチとまでは行かなくても目突きくらい食わらせてやりたいと思ったことは誰しも経験済だろう。

    さて、ここからが防災だ。

    えー、飛ぶー。飛ぶんです。

    そう、実は防災こそ我慢点の日本代表、森保ジャパンのエースストライカーであることを皆さまご存じだろうか。

    高速道路での出来事です

    ワタシは高速道路を毎週のように走る仕事をしているのですが、月曜日や金曜日の朝、夕はだいたい車が渋滞します。しかしたまに百年に一度の渋滞と言って差し支えない超がつく渋滞に巻き込まれることがあるのですが、その時に限ってトイレが近くなっている。

    「あ、ヤバいかも」と目の前の動かないトラックのお尻を見ながら心の中で思ってからは戦争です。圧倒的武力で侵攻してくる尿意に対し絶叫に近い歌声で対抗します。

    ただある時、あれはそう、十何年前になるだろうか。

    地震があり、それがなかなか大きな地震で、仕事もままならず会社に高速道路で帰っている最中、その百年に一度の大渋滞につかまりワタシは地獄の底に叩き落されることになります。

    尿意という武力侵攻が始まり、その時は同乗者もいて絶叫に近い歌声を披露するわけにもいかず、ただひたすら耐えるしかありませんでした。

    もう行くしかない

    行き慣れた道です。パーキングがもうすぐそこまで迫っていることもわかっています。あと少し、あと少し!でもまずいことにワタシと同じ境遇の人間が他にもたくさんいることがわかりました。パーキングまでの長い渋滞が万里の長城のように続いていており眩暈を起こしそうになります。しかしその他大勢の同じ境遇の人たちに共感しているゆとりはありません。ここでも認識どころの騒ぎではありませんでした。すみません、修行不足で。そしてワタシは次の瞬間、ついに宣言します。

    「もう無理、行きます!」アムロ行きます並の大声です。

    アムロ行きます画像

    ワタシはパーキングにやや入ったくらいの一本道を車を飛び出し走りました。パーキングにはあの広い駐車場にたどり着くまで細い一本道があります。ワタシはそこを全力で走りました。栄光に向かって走れです。ワタシの我慢点はすでにワタシの膀胱を破壊しつつあります。

    「頼む、間に合ってくれ」

    「神様ワタシに時間をください」

    わかっています、笑われていることを。

    同僚に、車の中のオバちゃんたちに。

    しかし我慢点の中心部へと至りつつあるワタシはすでに理性を越えた存在へと昇華されていたのです。

    すみません、ちょっと興奮してしまいました・・・

    この結末については書かないことにします。

    なぜなら全ての結末がハッピーエンドであるはずがないからです。

    えっとー(笑)

    はい、わかっています。

    「君はいったい何を言おうとしているんだ。要点を言いなさい、要点を」よく上司に絡まれる時に使われる言葉がそれです。ワタシが何を言おうとしているかというと、「トイレだけは我慢できませんよ」ということと「備えは大事ですよ」ということの二つなんです。マジ。

    だからアムロ行きますはどうでも良い話なんです。

    すみません。

    こういうことです。

    地震があった➡高速道路が渋滞する➡トイレに行けなくなる。

    この簡単な三段論法さえ頭に入っていれば、想像しておけば、高速道路に入る前にトイレへ行って用を済ませておくことは出来たはずなんです。そうしておけばあんな恥辱を味わわずに済んだのに。

    災害時のトイレについて

    災害時のトイレはヤバいです。だって、想像してみて下さいよ。水は出ない、トイレは流れない、避難所の仮設トイレは大渋滞、我慢点はもうすこにまで迫っている、ただ他の被災者たちも同じなので譲ってくれとも言えない。

    そんな状態です。家だったらまだ、ペットボトルだとかコンビニの袋だとかそういうのにそっと贈り物を届けることも出来るのかもしれませんが、それにしたって普通の精神状態ではかなり抵抗があります。普段、ワタシたちは、トイレによって、下水道によって、ワタシたち自身のものを素敵に循環させてくれるシステムの中に身を置いていることを忘れています。守っている側は気付いていますが、守られている側は意外と忘れてしまうのです。

    非常時のトイレはこれが良いと思う

    このトイレは防災グッズ大賞2年連続で受賞しています。Amazonベストセラー・楽天ランキング1位を獲得しています。テレビ・雑誌など各種メディアにも多数掲載されました。防災士監修により、実際の避難生活を想定した設計にこだわった商品づくりで多くの支持を集めています。

    「いつもに溶け込む防災グッズ」をコンセプトに、よくもまあここまで考えたなあという「芸術的な防災用トイレ」です。もちろんワタシも持っていますが、邪魔にならず、実用的で、インテリアとしても良い感じの頼りになる相棒みたいなトイレです。

    「何を言っているんだ」と思われるかもしれませんが、だって本当なんだもの。詳しくは👇の公式サイトでご確認ください。

    普段使いから非常時まで。フェーズフリーな防災グッズ専門ブランド【スツーレ】

    防災はやっぱりトイレからじゃないかなー

    防災って何から始めようかって思いませんか?

    ワタシもそうでした。

    防災バックとかポータブル電源とか。

    色々あるじゃないですか。

    でもやっぱりトイレからなんじゃないですかねー。

    だって、その時が来たら、「どこでします?」

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    72時間の壁シリーズのサムネイル画像
  • 【72時間の壁物語・連載第9回】

    【72時間の壁物語・連載第9回】

    防災×食物アレルギー──同じ鍋を囲めなかった夜

    ――72時間で、本当に守るべきもの

    ※本作は防災意識の向上を目的としたフィクションです。作中に登場する地震・人物・日時・地名・出来事は架空の設定であり、実在の災害・団体・個人とは関係ありません。

    ■ 想定シナリオ

    発生日時

    2028年9月14日 午前5時42分

    災害名

    相模湾沖巨大地震(架空の地震)

    想定される被害

    ・広域停電

    ・断水

    ・物流停止

    ・通信障害

    ・避難所生活

    ・救援物資到着まで72時間以上

    午前5時42分

    耳をつんざく警報音で目が覚めた。

    「緊急地震速報です。」

    次の瞬間だった。

    家が、

    横へ飛んだ。

    棚から皿が落ちる。

    冷蔵庫が動く。

    照明が揺れる。

    寝室から、

    娘の泣き声が聞こえた。

    私は裸足のまま走った。

    小学三年生の娘を抱きしめる。

    夫は玄関を押さえていた。

    揺れは終わらない。

    時計だけが、

    壁の上で激しく震えていた。

    娘を抱えて逃げる母親の画像。父はドアを押さえている。

    世界が止まった朝

    停電。

    断水。

    信号は消え、

    スマートフォンには

    「通信できません」

    の文字だけが残った。

    スーパーは営業できず、

    コンビニには長い列ができていた。

    昼過ぎ。

    携帯ラジオだけが街の状況を伝えていた。

    「相模湾沖巨大地震(架空の地震)の影響で、広い範囲で停電・断水が発生しています。物流の再開は未定です。」

    私は、

    防災棚を開けた。

    保存水。

    簡易トイレ。

    ランタン。

    乾電池。

    モバイルバッテリー。

    カセットコンロ。

    「準備しておいてよかった。」

    夫が小さく言った。

    私もそう思った。

    まだ、

    本当に足りないものに気付いていなかった。


    二日目の夕食

    停電二日目。

    午後六時。

    コンロの青い炎だけが、

    食卓を照らしていた。

    鍋から、

    湯気が立ち上る。

    娘が笑う。

    「久しぶりに温かいご飯だね。」

    その一言だけで、

    私は泣きそうになった。

    「いただきます。」

    そう言おうとして、

    娘の手が止まる。

    「ママ。」

    娘は茶碗を見つめたまま言った。

    「これ……

    食べられない。」

    卵アレルギー

    その言葉だけで、

    全部分かった。

    娘には、

    卵アレルギーがある。

    普段なら、

    私は絶対に原材料表示を見る。

    スーパーなら別の商品を選ぶ。

    学校にも伝えてある。

    でも、

    災害では違う。

    「今あるものを食べる。」

    それしか選べなかった。


    母親として負けた瞬間

    娘は笑っていた。

    「お茶だけで平気。」

    そう言った。

    私は、

    その笑顔を見ることができなかった。

    お腹が空いているはずなのに。

    食べたいはずなのに。

    娘は、

    私を困らせたくなかったのだ。

    私は初めて知った。

    防災とは、

    保存水の本数ではない。

    非常食の数でもない。

    家族一人ひとりに合わせた備えだった。


    避難所でも同じだった

    母にあやまる女性の画像

    翌朝。

    体育館では炊き出しが始まっていた。

    温かい湯気。

    「どうぞ。」

    スタッフが笑顔で差し出す。

    娘は、

    列に並ばなかった。

    事情を話すと、

    スタッフは申し訳なさそうに頭を下げた。

    「対応できるものが……。」

    責めることはできなかった。

    避難所は悪くない。

    スタッフも悪くない。

    炊き出しも悪くない。

    悪かったのは、

    「みんな同じものが食べられる。」

    そう思い込んでいた私だった。


    あの日から、備えが変わった

    家へ戻って最初にしたことは、

    家具を直すことではなかった。

    防災棚を開けた。

    一つひとつ見直した。

    保存期間では選ばない。

    価格でも選ばない。

    娘が、

    安心して

    「いただきます。」

    と言えること。

    それを基準に選び直した。

    調べていく中で知ったのは、食物アレルギーに配慮し、長期保存できる備蓄食があるということだった。

    水やお湯だけで食べられ、長期間保存できるものなら、災害だけでなく、旅行やキャンプ、体調を崩した日の備えにもなる。

    私は非常食を買ったのではない。

    娘の「いただきます」を備えた。




    家族一人ひとりの「食べられる」を守る備え

    家族に食物アレルギーがあるなら、「非常食がある」だけでは十分とは言えません。

    普段から安心して食べられる長期保存食を備えておくことも、防災の大切な準備の一つです。



    編集後記

    このシリーズでは、

    水を描いた。

    通信を描いた。

    停電を描いた。

    今回、私は初めて、

    「食べられない」という72時間の壁を知った。

    災害は、

    みんなに同じようにやって来る。

    でも、

    だから備えも、

    「家族の人数分」では終わらない。

    家族一人ひとりの”日常”を守ること。

    それが、

    本当の防災なのだと思う。




    72時間の壁シリーズのサムネイル画像
  • あの日、子どもが「ご飯ある?」と聞いた。

    あの日、子どもが「ご飯ある?」と聞いた。

    停電になって三時間。

    冷蔵庫は静かだった。

    電子レンジも動かない。

    スマートフォンには「大規模停電」の文字。

    窓の外では信号機も消えていた。

    その時だった。

    子どもが何気なく聞いた。

    「今日、ご飯ある?」

    私は返事ができなかった。

    子供がお腹を空かせている画像

    「お母さん、お腹空いた・・・」

    災害で最初に困るのは「食べること」

    地震。

    豪雨。

    台風。

    南海トラフ巨大地震。

    ニュースでは建物ばかり映る。

    しかし、本当に困るのはもっと身近なことだ。

    「今日、何を食べる?」

    停電すると炊飯器は使えない。

    断水すると料理もできない。

    物流が止まればスーパーの棚は空になる。

    災害は突然やって来る。

    そして食卓も突然止まる。

    スーパーの棚が空になっている画像

    空っぽの棚に茫然とする

    「ご飯ある?」に、迷わず「あるよ」と答えるために。

    ▶家族を守る備蓄食を見る

    「非常食はまずい」

    そう思っていた。

    正直に言えば私もそうだった。

    乾いている。

    味が薄い。

    子どもが食べない。

    買っても押し入れに入れたまま。

    だから後回しになる。

    ところが最近の備蓄食はまったく違っていた。

    国産米を使い、

    水だけでも食べられる。

    しかも5年以上保存できる。

    非常食というより、

    「いつものご飯」に近づいている。

    本当に必要なのは「食べられる」ではなく「食べたい」

    災害時は体だけではない。

    心も疲れる。

    そんな時、

    慣れない味ばかりでは食欲も落ちる。

    だから備蓄食は、

    保存期間だけでは選べない。

    子どもが食べられるか。

    高齢の家族でも食べやすいか。

    アレルギーに配慮されているか。

    そこまで考えて初めて、

    「命を守る備え」になる。

    普段使いできる備蓄は、続けられる

    備蓄が続かない理由は簡単だ。

    使わないから。

    最近は、

    キャンプ。

    登山。

    旅行。

    夜食。

    忙しい日の昼食。

    そんな日常でも食べられる保存食が増えている。

    だから賞味期限を迎える前に使える。

    そしてまた買い足す。

    ローリングストックが自然に続く。

    備蓄は「しまうもの」ではなく、

    「暮らしの中で回すもの」に変わり始めている。

    アレルギー対応という、見えない安心

    災害は誰にでも起こる。

    しかし、

    食べられるものは人によって違う。

    卵。

    乳。

    小麦。

    落花生。

    家では避けられても、

    災害時は選べないこともある。

    だからこそ、

    アレルギーに配慮した長期保存食は、

    「あると便利」ではなく、

    「あるから安心」へ変わる。

    備蓄は未来の自分へのプレゼント

    人は、

    「まだ大丈夫」

    と思ってしまう。

    正常性バイアスという、

    誰にでもある心理だ。

    だから備蓄は、

    義務ではない。

    備えなくて後悔した人は、数え切れない

    ▶長期保存できる備蓄食はコチラ

    私が選ぶなら、この条件は外せない

    備蓄食を選ぶなら、私は次の条件を重視します。

    • 国産米を使用していること
    • 5年以上保存できること
    • 水だけでも食べられること
    • アレルギーへの配慮があること
    • 普段のキャンプや旅行でも使えること

    この条件を満たす備蓄食なら、押し入れに眠らせるのではなく、暮らしの中で無理なく備えを続けられます。

    最後に

    笑顔の食卓画像

    災害は、

    食べ物を奪う。

    でも本当に失われるのは、

    「家族に温かいご飯を出せる」という安心なのかもしれない。

    だから私は、

    非常食ではなく、

    “未来の食卓” を買うことにした。

    未来の自分から「ありがとう」をもらおう

    ▶「未来の食卓」を今日から備える


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  • X-DAY 第5話

    X-DAY 第5話

    降下地点

    東京湾。

    夜。

    焦げ跡の前で、

    誰も言葉を発しなかった。

    巨大な円。

    焼け焦げたコンクリート。

    倉庫だけが消えている。

    まるで。

    何かが空から降り立ったように。


    美咲がしゃがみ込む。

    黒く変色した地面を調べる。

    そして顔色を変えた。

    「下からじゃない」

    「上からだ」


    直樹が空を見る。

    曇り空。

    何も見えない。

    だが。

    全員の脳裏には、

    東京湾上空の巨大な影が浮かんでいた。


    「あれか・・・」

    拓也が呟く。


    プレミアムチャージWiFiの通信ランプが点滅している。

    不安定。

    だが生きている。


    「変だな」

    拓也が端末を見つめる。


    「どうした」


    「ここだけ電波が強い」


    全員が顔を上げた。


    「強い?」


    「あり得ない」


    「周囲は死んでる」


    「でもこの真下だけ異常に通信状態が良い」


    美咲が言う。


    「中継局・・・?」


    拓也は首を振る。


    「違う」


    「もっと近い」


    「真下だ」

    【プレミアムチャージWiFi】契約・月額0円・使いたい時に使いたい分だけチャージして使う!ポケットWiFiは借りるだけじゃない!

    少女の後ろ姿画像

    「何をしてる・・・?」

    指さす少女

    少女が歩き出す。


    焦げ跡の中央へ。


    迷いがない。


    まるで知っているように。


    「ここ」


    少女が指差した。



    調査を始める。


    焦げたコンクリート。


    その一部が溶解していた。


    美咲が言う。


    「千度どころじゃない」


    「こんな熱源見たことがない」



    やがて。


    工具が空洞を叩いた。


    コン。


    全員が止まる。


    空洞。


    地下だ。

    地下発見・・・

    地下発見画像

    コンクリートを外す。


    暗闇。


    地下へ続く階段。



    そして。


    拓也の端末が反応した。


    プレミアムチャージWiFi。


    受信レベル最大。


    「馬鹿な・・・」


    「基地局がある」



    「地下に?」



    「いや・・・」


    拓也の表情が変わる。


    「動いてる」



    「何?」



    「信号源が移動してる」



    全員が凍りつく。


    地下の奥。


    何かがいる。

    【プレミアムチャージWiFi】契約・月額0円・使いたい時に使いたい分だけチャージして使う!ポケットWiFiは借りるだけじゃない!

    何かがいる

    その時だった。


    遠くで地響きがした。


    低い振動。


    倉庫全体が微かに揺れる。


    そして。


    地下から風が吹き上がった。


    温かい。


    機械の匂い。


    いや。


    もっと異質な何か。



    少女が呟く。


    「降りてきた」



    直樹が振り返る。


    「何が」



    少女は地下を見つめたまま答えた。


    「空から」



    「ここへ」

    UNKNOWN NODE

    その瞬間。


    拓也の端末に、

    これまで見たことのないネットワーク名が表示された。


    UNKNOWN NODE


    接続可能



    誰も動けない。


    地下の奥で。


    何かが起動していた。

    【プレミアムチャージWiFi】契約・月額0円・使いたい時に使いたい分だけチャージして使う!ポケットWiFiは借りるだけじゃない!


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  • トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき

    トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき

    第二話:最初の灰

    1. 6月某日 午前9時12分 ― 東京・新宿

    朝倉悠はリビングの窓を開けた。

    梅雨の湿った空気が流れ込む。

    テーブルには飲みかけのコーヒー。

    テレビでは朝の情報番組。

    娘は学校へ行った。

    息子は保育園。

    妻はパート先へ向かっている。

    いつもと変わらない平日の朝だった。

    窓の外を見ると、空が少し白っぽい。

    (天気悪いな……)

    その程度にしか思わなかった。

    スマホが震える。

    《富士山周辺で噴煙上昇の可能性。気象庁が会見へ》

    悠は苦笑した。

    「また富士山か……」

    何度目だろう。

    富士山の前兆ニュースは。

    結局、何も起きない。

    そう思って通知を閉じた。

    その時だった。

    パサ……

    窓枠に何かが落ちる音。

    パサ……

    もう一度。

    悠は指先でその粒を拾った。

    白く、ざらついている。

    砂ではない。

    雪でもない。

    灰だった。

    胸の奥が、わずかにざわついた。

    指先の灰を眺める男の画像

    9時30分 ― 富士山火山観測センター

    三雲剛はモニターを見つめていた。

    無数の波形が画面を埋め尽くしている。

    「……始まったな」

    助手が声を震わせた。

    「先生、本当に噴火するんですか?」

    三雲は首を振った。

    「違う。」

    数秒の沈黙。

    そして低く言った。

    「もう噴火している。」

    助手の顔から血の気が引いた。

    「風向きは?」

    「東だ。」

    その一言で部屋の空気が凍った。

    東。

    首都圏方向だった。

    午前9時43分 ― 東京・新宿

    悠のスマホが鳴った。

    妻からのメッセージ。

    『ねえ、ニュース見た?』

    『富士山、本当に危ないみたい』

    続いてもう一通。

    『子どもたち、大丈夫かな』

    その文章を見た瞬間、

    悠の胸が重くなった。

    娘の学校。

    息子の保育園。

    いつもなら数分で迎えに行ける。

    だが、もし何か起きたら?

    そんな考えが頭をよぎる。

    慌てて学校のホームページを開く。

    アクセス集中。

    表示されない。

    保育園も同じだった。

    初めて不安が現実味を帯び始めた。

    午前10時02分 ― テレビ速報

    テレビ画面に富士山のライブ映像が映る。

    山頂付近から白い煙が上がっていた。

    司会者が言う。

    「現在、専門家の見解を待っています――」

    その瞬間だった。

    ドンッッッ!!!

    画面が大きく揺れた。

    富士山噴火画像

    巨大な黒い噴煙が空へ突き上がる。

    アナウンサーが言葉を失う。

    「……っ!」

    数秒後、

    震える声が響いた。

    「いま、富士山が噴火しました!」

    「噴煙が急速に上昇しています!」

    「これは……大規模な噴火の可能性があります!」

    噴煙柱は空へ伸び続けた。

    画面の上端を超える。

    「噴煙高度、推定1万メートル!」

    「風向きは東です!」

    「首都圏方向です!」

    悠は立ち上がった。

    テレビの向こうで起きている出来事なのに、

    なぜか自分の家のすぐ近くで起きているように感じた。

    午前10時18分 ― 通信会社本社

    榊原慧は基地局データを見ていた。

    異常値が増えている。

    まだ灰はほとんど積もっていない。

    それでも通信品質は少しずつ悪化していた。

    隣の同僚が笑う。

    「大げさだな。」

    「たかが灰だろ?」

    榊原はモニターから目を離さなかった。

    「違う。」

    そして静かに言う。

    「灰は雪じゃない。」

    「溶けない。」

    「消えない。」

    「積もり続ける。」

    その言葉に、

    誰も返事ができなかった。

    👇災害時、最初に必要になるのは電源です👇


    午前10時35分 ― 東京の街

    悠は外へ出た。

    違和感はすぐに分かった。

    車のフロントガラス。

    街路樹の葉。

    コンビニの看板。

    すべてに白い粉がうっすら積もっている。

    空気もどこか重い。

    空を見上げる。

    青空が消え始めていた。

    スマホが鳴る。

    緊急速報。

    《富士山噴火》

    《首都圏で降灰を観測》

    《不要不急の外出を控えてください》

    周囲がざわめく。

    人々がスマホを見る。

    写真を撮る。

    笑っている人もいる。

    だが悠は笑えなかった。

    娘と息子の顔が浮かんだからだ。

    👇自宅に、持ち運べる電源を置いておくという選択👇


    午前11時00分 ― 灰の雨

    東京に降灰する画像

    空は完全に色を失っていた。

    灰色の幕が東京を覆う。

    テレビでは三雲剛が緊急出演していた。

    「これは灰の雨です。」

    「雪ではありません。」

    「溶けません。」

    「積もれば都市機能は停止します。」

    誰も話さなくなった。

    窓の外を見つめる。

    灰が降っている。

    東京に。

    現実に。

    朝までは、

    ただのニュースだった。

    だが今は違う。

    学校にいる娘。

    保育園にいる息子。

    離れた場所にいる妻。

    守りたい人たちがいる。

    だからこそ分かる。

    これは遠い山の噴火ではない。

    自分たちの生活そのものが、

    静かに飲み込まれ始めているのだと。

    そして誰もまだ知らない。

    本当の地獄は、

    これから始まるということを。

    👇困った時には、もう遅い👇




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  • トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき(第一話)

    トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき(第一話)

    『登場人物』

    • 朝倉 悠(あさくら ゆう)  防災系ブログ「未来地図」を運営するライター。 災害史に詳しいが、富士山噴火は“遠い話”だと思っている。
    • 白石 玲奈(しらいし れな)  東京都危機管理局の若手職員。 富士山噴火対策の担当だが、組織の鈍さに苛立ちを抱える。
    • 三雲 剛(みくも つよし)  富士山火山観測センターの火山学者。 「300年の沈黙は異常だ」と警鐘を鳴らすが、世間からは“悲観論者”扱い。
    • 榊原 慧(さかきばら けい)  大手通信会社のネットワークエンジニア。 富士山噴火時の通信障害を恐れているが、会社は「想定外」で片付ける。

    第一話:静かすぎる山

    1. 2026年6月、東京・新宿

    夜の湿気がまとわりつく。 朝倉悠は、スマホに届いたニュース速報を見て足を止めた。

    《富士山周辺で低周波地震が増加。気象庁「現時点で噴火の兆候はない」》

    「またか……」

    富士山の“前兆ニュース”は、もはや季節の風物詩。 だが、この夜はなぜか胸の奥にざらつくものが残った。

    2. 富士山火山観測センター・三雲の焦り

    モニターを見つめる二人の男の画像

    山梨県。 三雲剛は、モニターに映る波形を見つめていた。

    「……増えている。明らかに。」

    低周波地震。 マグマが地下で動くときに発生する“火山の胎動”。

    助手が声を震わせる。

    「三雲先生、これは……?」

    三雲は静かに答えた。

    「富士山は平均30年に1度噴火してきた。それが300年以上も静かだ。 これは“異常な静けさ”なんだ。 次が来てもおかしくない。」

    研究室の空気が一瞬で冷えた。

    3. 東京都危機管理局・玲奈の苛立ち

    都庁の会議室。 白石玲奈は、資料を叩きつけるように机に置いた。

    「宝永噴火規模なら、東京23区で10センチの降灰です。物流は止まり、停電は3600万人規模。首都機能は麻痺します。避難計画の見直しが必要です!」

    しかし上司は眉をひそめた。

    「玲奈くん、そんな“最悪の想定”を出したらパニックになる。  まずは“現実的な範囲”で考えよう。」

    玲奈は唇を噛んだ。

    (現実的……?  富士山噴火は“国難級”だって国が言ってるのに……)

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    4. 通信会社・榊原の不安

    深夜のオフィス。 榊原慧は、富士山噴火時の通信シミュレーションを見ていた。

    「降灰3センチで基地局の絶縁低下……  10センチで大規模停波……  30センチで復旧不能……」

    上司は笑って言った。

    「そんなの起きないよ。富士山なんて300年噴火してないんだ。」

    榊原は呟いた。

    「……だから怖いんですよ。」

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    5. そして、静寂が破れる

    霞み始めた東京の画像

    翌朝。 朝倉悠のスマホが震えた。

    《富士山・山頂直下で低周波地震が急増。専門家「数日以内に噴火の可能性も」》

    画面には三雲剛の顔が映っていた。

    「極端な話、明日噴火してもおかしくない。富士山は“若い火山”だ。活動は終わっていない。」

    悠は息を呑んだ。

    その瞬間、 東京の空に、かすかな灰色の霞が漂い始めていることに、 まだ誰も気づいていなかった。


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