「72時間の壁」とは、災害発生から3日以内に生死が分かれるとされるタイムリミット。阪神・淡路大震災の救助データから生まれ、日本全国に広まった防災の常識です。 しかし、この“3日神話”は「救助の限界時間」であり、「自立できる時間」ではありません。ここに誤解が生まれ、都市伝説のように語り継がれてきました。

72時間神話の歴史と進化
国際的な防災理論を見渡すと、この「3日神話」は必ずしも普遍的ではありません。アメリカのFEMAやニュージーランドでは、最低でも7日間の備蓄を推奨しており、3日間では不十分だと考えられています。つまり「72時間」は救助の限界を示す一つの目安に過ぎず、自立して生き延びるためにはさらに長い時間を想定する必要があるのです。
そこで近年注目されているのが「SRT(Self-Reliance Time)」という新しい概念です。これは家庭や地域が自らの力で生き抜ける時間を指し、7日から14日間を現実的な目標としています。南海トラフ巨大地震のような長期的な被災を前提にすれば、72時間を超える備えが不可欠であり、従来の「3日神話」を超えた新しい防災モデルが求められているのです。
このように「72時間の壁」は、歴史の中で生まれ、広まり、そして再定義されてきました。かつては救助のタイムリミットとして語られたものが、今では「自立継続時間」へと進化し、家庭防災の新しい指標となっています。
