投稿者: 管理人

  • X-DAY 第6話

    X-DAY 第6話

    LEVEL -3

    東京湾

    午後11時56分。

    誰も、地下へ続く階段を見つめたまま動かなかった。

    暗闇。

    ライトの光は、十数段先で闇に飲み込まれる。

    底が見えない。

    静かだった。

    静かすぎた。

    地上では、波の音がかすかに聞こえる。

    しかし、地下からは何一つ聞こえない。

    風もない。

    空気すら止まっているようだった。

    地下に伸びる階段を下りる画像

    「……行こう。」

    最初に歩き出したのは美咲だった。

    ヘルメットのライトが、階段を白く照らす。

    一段。

    また一段。

    靴音だけが響く。

    カン……

    カン……

    コンクリートの反響音ではない。

    どこか柔らかい。

    「音が違う。」

    美咲が足を止める。

    ライトを床へ向けた。

    階段はコンクリートではなかった。

    表面には、黒いゴム状の素材が敷かれている。

    防振材。

    大型施設でしか使われないものだった。

    「倉庫の地下じゃない。」

    直樹が低く呟く。

    「こんな設備、見たことがない。」

    壁へライトを向ける。

    配管。

    電源ケーブル。

    さらに、太い光ファイバー。

    何十本も束になって、地下へ伸びている。

    「通信設備……?」

    拓也が思わず声を漏らした。

    さらに降りる。

    二十段。

    三十段。

    四十段。

    まだ終わらない。

    「深すぎる。」

    美咲が振り返る。

    地上の光は、もう小さな点になっていた。

    突然、

    壁に白いプレートが現れる。

    LEVEL -1

    全員が立ち止まる。

    「まだ一階……?」

    さらに降りる。

    空気が変わった。

    ひんやりしている。

    しかし、地下特有の湿気がない。

    乾いている。

    古いコンクリート。

    金属。

    機械油。

    そして、雷雨の前に感じる、微かなオゾン臭。

    「換気が動いてる。」

    美咲が天井を照らす。

    巨大なダクト。

    内部から、ごく弱い風が流れていた。

    「電気が生きてる。」

    直樹の声が少し震えた。

    「誰が管理してる。」

    誰も答えられない。

    その時だった。

    拓也の胸ポケットが震えた。

    プレミアムチャージWiFi。

    通信ランプ。

    一本。

    二本。

    三本。

    四本。

    最大。

    「あり得ない。」

    拓也は立ち止まる。

    「地下へ降りるほど、通信が強くなる。」

    「普通は圏外になる。」

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    画面を見る。

    表示されたネットワークは一つ。

    UNKNOWN NODE

    接続可能

    「接続するな。」

    直樹が即座に言った。

    「何か分からない。」

    「ウイルスかもしれない。」

    美咲も頷く。

    「未知の通信を受けるのは危険。」

    少女だけが、階段のさらに下を見つめている。

    「違う。」

    静かな声だった。

    「向こうが待ってる。」

    「誰が。」

    少女は答えない。

    ただ、暗闇を見ていた。

    再び歩き出す。

    やがて、巨大な鋼鉄製の扉が現れた。

    高さ三メートル。

    分厚い防爆扉。

    表面には傷一つない。

    横には、電子認証パネル。

    しかし、電源は落ちている。

    その横に、もう一枚。

    白いプレート。

    LEVEL -3

    「ここだ。」

    美咲が息を呑む。


    その瞬間。

    扉の向こうから、低い音が響いた。

    ゴン。

    全員が固まる。

    もう一度。

    ゴン。

    今度は少し近い。

    何かが動いた。

    巨大な。

    重い。

    金属の塊のような音だった。

    拓也の端末が震える。

    画面が切り替わる。

    UNKNOWN NODE

    通信要求

    「来る。」

    少女が呟く。

    拓也は画面を見つめる。

    数秒迷った。

    そして、接続を押した。

    通信中……

    ……

    ……

    ……

    接続完了

    画面は真っ黒だった。

    数秒後。

    白い文字だけが現れる。

    WELCOME

    全員が息を止める。

    さらに、二行目。

    WE HAVE BEEN WAITING.

    (私たちは待っていた。)

    突然、画面が乱れる。

    ザーッ……

    UNKNOWN NODE

    AUTHORIZATION REQUIRED

    その下には、

    二つだけ。

    YESかNOを選択させる画像

    YES

    NO

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    地下の奥から、

    再び振動が響く。

    ゴン。

    ゴン。

    今度は、明らかに近い。

    画面の右上に、数字が表示された。

    59

    58

    57

    ……

    「カウントダウン……。」

    拓也が呟く。

    美咲が首を振る。

    「違う。」

    「選択の制限時間。」

    「YESを押したら。」

    直樹が息を飲む。

    「何が起きる。」

    誰にも分からない。

    「NOを押したら?」

    沈黙。

    それも分からない。

    少女だけが、拓也を見つめる。

    「選んで。」

    その声は、お願いではなかった。

    知っている者の声だった。

    数字は止まらない。

    10

    9

    8

    ……

    地下の振動は、さらに近付く。

    ゴン。

    ゴン。

    ゴン。

    拓也の指が、ゆっくりと

    YES

    へ伸びる。

    3

    2

    1

    画面が白く発光した。

    UNKNOWN NODE

    AUTHORIZATION ACCEPTED

    その瞬間。

    重さ数十トンはある防爆扉が、ゆっくりと、音もなく開き始めた。

    地上では決して聞こえなかったはずの機械音が、長い眠りから目覚めるように地下全体へ響き渡る。

    誰も知らない。

    この扉の向こうにあるものが、人類の未来を変える最初の一歩になることを。

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  • 我慢の限界点

    我慢の限界点

    ワタシの場合

    生きていると色んなことがあります。良いことばかりではありません。多分、この記事を読まれている方のほとんどが、「悪いことの方が多いよ」と思っているのではないでしょうか。

    認識の問題だって

    身に起きた悪いことも、認識・・・受け止め方一つで良いことに変わるんだって。へえ、と思う。そんなふうに達観するために、いったいどんな「修行」を積まなければならないのだろう。

    例えば、通りすがりのヤンキーに突然、ぶん殴られたとする。
    さて、このあまりに非道な行為に対し、われわれは、いったいどんな「認識」をもって立ち向かうべきなのか。

    いやー。ムリムリムリ

    例えばワタシがヒクソン・グレイシー並に(古っ)強かったら、通りすがりのヤンキーにぶん殴られた瞬間、いや、ヤンキーがその挙動に入った瞬間、タックルして馬乗りパンチを食らわすだろう。もう、ボコボコである。なぜならば、自分を守らなければならないのだから仕方がない。問答無用に、馬乗りパンチという最終手段にいきなり打って出るのだ。つまり認識どころの騒ぎではない。

    修行不足と言われても・・・

    やはり誰しも我慢の最後の点=我慢点というのはあるのではないだろうか。もちろん、修行の行き届いた方たちは別だ。その他大勢、おそらく人類の9割の人々は自分なりの我慢点を持っている。

    その我慢点を越えた瞬間、その人は自分自身ではなくなる。怒り、泣き、喚く・・・あらゆる手段を使って感情を爆発させ、今目の前にある危機に対し、最後の手段に打って出るのだ。

    もちろん、そうなったらだいたい良いことはない。

    例えばサラリーマンが上司に対し、そんな態度に出ようものならチーン、ゲームオーバーだ。ただ馬乗りパンチとまでは行かなくても目突きくらい食わらせてやりたいと思ったことは誰しも経験済だろう。

    さて、ここからが防災だ。

    えー、飛ぶー。飛ぶんです。

    そう、実は防災こそ我慢点の日本代表、森保ジャパンのエースストライカーであることを皆さまご存じだろうか。

    高速道路での出来事です

    ワタシは高速道路を毎週のように走る仕事をしているのですが、月曜日や金曜日の朝、夕はだいたい車が渋滞します。しかしたまに百年に一度の渋滞と言って差し支えない超がつく渋滞に巻き込まれることがあるのですが、その時に限ってトイレが近くなっている。

    「あ、ヤバいかも」と目の前の動かないトラックのお尻を見ながら心の中で思ってからは戦争です。圧倒的武力で侵攻してくる尿意に対し絶叫に近い歌声で対抗します。

    ただある時、あれはそう、十何年前になるだろうか。

    地震があり、それがなかなか大きな地震で、仕事もままならず会社に高速道路で帰っている最中、その百年に一度の大渋滞につかまりワタシは地獄の底に叩き落されることになります。

    尿意という武力侵攻が始まり、その時は同乗者もいて絶叫に近い歌声を披露するわけにもいかず、ただひたすら耐えるしかありませんでした。

    もう行くしかない

    行き慣れた道です。パーキングがもうすぐそこまで迫っていることもわかっています。あと少し、あと少し!でもまずいことにワタシと同じ境遇の人間が他にもたくさんいることがわかりました。パーキングまでの長い渋滞が万里の長城のように続いていており眩暈を起こしそうになります。しかしその他大勢の同じ境遇の人たちに共感しているゆとりはありません。ここでも認識どころの騒ぎではありませんでした。すみません、修行不足で。そしてワタシは次の瞬間、ついに宣言します。

    「もう無理、行きます!」アムロ行きます並の大声です。

    アムロ行きます画像

    ワタシはパーキングにやや入ったくらいの一本道を車を飛び出し走りました。パーキングにはあの広い駐車場にたどり着くまで細い一本道があります。ワタシはそこを全力で走りました。栄光に向かって走れです。ワタシの我慢点はすでにワタシの膀胱を破壊しつつあります。

    「頼む、間に合ってくれ」

    「神様ワタシに時間をください」

    わかっています、笑われていることを。

    同僚に、車の中のオバちゃんたちに。

    しかし我慢点の中心部へと至りつつあるワタシはすでに理性を越えた存在へと昇華されていたのです。

    すみません、ちょっと興奮してしまいました・・・

    この結末については書かないことにします。

    なぜなら全ての結末がハッピーエンドであるはずがないからです。

    えっとー(笑)

    はい、わかっています。

    「君はいったい何を言おうとしているんだ。要点を言いなさい、要点を」よく上司に絡まれる時に使われる言葉がそれです。ワタシが何を言おうとしているかというと、「トイレだけは我慢できませんよ」ということと「備えは大事ですよ」ということの二つなんです。マジ。

    だからアムロ行きますはどうでも良い話なんです。

    すみません。

    こういうことです。

    地震があった➡高速道路が渋滞する➡トイレに行けなくなる。

    この簡単な三段論法さえ頭に入っていれば、想像しておけば、高速道路に入る前にトイレへ行って用を済ませておくことは出来たはずなんです。そうしておけばあんな恥辱を味わわずに済んだのに。

    災害時のトイレについて

    災害時のトイレはヤバいです。だって、想像してみて下さいよ。水は出ない、トイレは流れない、避難所の仮設トイレは大渋滞、我慢点はもうすこにまで迫っている、ただ他の被災者たちも同じなので譲ってくれとも言えない。

    そんな状態です。家だったらまだ、ペットボトルだとかコンビニの袋だとかそういうのにそっと贈り物を届けることも出来るのかもしれませんが、それにしたって普通の精神状態ではかなり抵抗があります。普段、ワタシたちは、トイレによって、下水道によって、ワタシたち自身のものを素敵に循環させてくれるシステムの中に身を置いていることを忘れています。守っている側は気付いていますが、守られている側は意外と忘れてしまうのです。

    非常時のトイレはこれが良いと思う

    このトイレは防災グッズ大賞2年連続で受賞しています。Amazonベストセラー・楽天ランキング1位を獲得しています。テレビ・雑誌など各種メディアにも多数掲載されました。防災士監修により、実際の避難生活を想定した設計にこだわった商品づくりで多くの支持を集めています。

    「いつもに溶け込む防災グッズ」をコンセプトに、よくもまあここまで考えたなあという「芸術的な防災用トイレ」です。もちろんワタシも持っていますが、邪魔にならず、実用的で、インテリアとしても良い感じの頼りになる相棒みたいなトイレです。

    「何を言っているんだ」と思われるかもしれませんが、だって本当なんだもの。詳しくは👇の公式サイトでご確認ください。

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    防災はやっぱりトイレからじゃないかなー

    防災って何から始めようかって思いませんか?

    ワタシもそうでした。

    防災バックとかポータブル電源とか。

    色々あるじゃないですか。

    でもやっぱりトイレからなんじゃないですかねー。

    だって、その時が来たら、「どこでします?」

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    72時間の壁シリーズのサムネイル画像
  • 【72時間の壁物語・連載第9回】

    【72時間の壁物語・連載第9回】

    防災×食物アレルギー──同じ鍋を囲めなかった夜

    ――72時間で、本当に守るべきもの

    ※本作は防災意識の向上を目的としたフィクションです。作中に登場する地震・人物・日時・地名・出来事は架空の設定であり、実在の災害・団体・個人とは関係ありません。

    ■ 想定シナリオ

    発生日時

    2028年9月14日 午前5時42分

    災害名

    相模湾沖巨大地震(架空の地震)

    想定される被害

    ・広域停電

    ・断水

    ・物流停止

    ・通信障害

    ・避難所生活

    ・救援物資到着まで72時間以上

    午前5時42分

    耳をつんざく警報音で目が覚めた。

    「緊急地震速報です。」

    次の瞬間だった。

    家が、

    横へ飛んだ。

    棚から皿が落ちる。

    冷蔵庫が動く。

    照明が揺れる。

    寝室から、

    娘の泣き声が聞こえた。

    私は裸足のまま走った。

    小学三年生の娘を抱きしめる。

    夫は玄関を押さえていた。

    揺れは終わらない。

    時計だけが、

    壁の上で激しく震えていた。

    娘を抱えて逃げる母親の画像。父はドアを押さえている。

    世界が止まった朝

    停電。

    断水。

    信号は消え、

    スマートフォンには

    「通信できません」

    の文字だけが残った。

    スーパーは営業できず、

    コンビニには長い列ができていた。

    昼過ぎ。

    携帯ラジオだけが街の状況を伝えていた。

    「相模湾沖巨大地震(架空の地震)の影響で、広い範囲で停電・断水が発生しています。物流の再開は未定です。」

    私は、

    防災棚を開けた。

    保存水。

    簡易トイレ。

    ランタン。

    乾電池。

    モバイルバッテリー。

    カセットコンロ。

    「準備しておいてよかった。」

    夫が小さく言った。

    私もそう思った。

    まだ、

    本当に足りないものに気付いていなかった。


    二日目の夕食

    停電二日目。

    午後六時。

    コンロの青い炎だけが、

    食卓を照らしていた。

    鍋から、

    湯気が立ち上る。

    娘が笑う。

    「久しぶりに温かいご飯だね。」

    その一言だけで、

    私は泣きそうになった。

    「いただきます。」

    そう言おうとして、

    娘の手が止まる。

    「ママ。」

    娘は茶碗を見つめたまま言った。

    「これ……

    食べられない。」

    卵アレルギー

    その言葉だけで、

    全部分かった。

    娘には、

    卵アレルギーがある。

    普段なら、

    私は絶対に原材料表示を見る。

    スーパーなら別の商品を選ぶ。

    学校にも伝えてある。

    でも、

    災害では違う。

    「今あるものを食べる。」

    それしか選べなかった。


    母親として負けた瞬間

    娘は笑っていた。

    「お茶だけで平気。」

    そう言った。

    私は、

    その笑顔を見ることができなかった。

    お腹が空いているはずなのに。

    食べたいはずなのに。

    娘は、

    私を困らせたくなかったのだ。

    私は初めて知った。

    防災とは、

    保存水の本数ではない。

    非常食の数でもない。

    家族一人ひとりに合わせた備えだった。


    避難所でも同じだった

    母にあやまる女性の画像

    翌朝。

    体育館では炊き出しが始まっていた。

    温かい湯気。

    「どうぞ。」

    スタッフが笑顔で差し出す。

    娘は、

    列に並ばなかった。

    事情を話すと、

    スタッフは申し訳なさそうに頭を下げた。

    「対応できるものが……。」

    責めることはできなかった。

    避難所は悪くない。

    スタッフも悪くない。

    炊き出しも悪くない。

    悪かったのは、

    「みんな同じものが食べられる。」

    そう思い込んでいた私だった。


    あの日から、備えが変わった

    家へ戻って最初にしたことは、

    家具を直すことではなかった。

    防災棚を開けた。

    一つひとつ見直した。

    保存期間では選ばない。

    価格でも選ばない。

    娘が、

    安心して

    「いただきます。」

    と言えること。

    それを基準に選び直した。

    調べていく中で知ったのは、食物アレルギーに配慮し、長期保存できる備蓄食があるということだった。

    水やお湯だけで食べられ、長期間保存できるものなら、災害だけでなく、旅行やキャンプ、体調を崩した日の備えにもなる。

    私は非常食を買ったのではない。

    娘の「いただきます」を備えた。




    家族一人ひとりの「食べられる」を守る備え

    家族に食物アレルギーがあるなら、「非常食がある」だけでは十分とは言えません。

    普段から安心して食べられる長期保存食を備えておくことも、防災の大切な準備の一つです。



    編集後記

    このシリーズでは、

    水を描いた。

    通信を描いた。

    停電を描いた。

    今回、私は初めて、

    「食べられない」という72時間の壁を知った。

    災害は、

    みんなに同じようにやって来る。

    でも、

    だから備えも、

    「家族の人数分」では終わらない。

    家族一人ひとりの”日常”を守ること。

    それが、

    本当の防災なのだと思う。




    72時間の壁シリーズのサムネイル画像
  • あの日、子どもが「ご飯ある?」と聞いた。

    あの日、子どもが「ご飯ある?」と聞いた。

    停電になって三時間。

    冷蔵庫は静かだった。

    電子レンジも動かない。

    スマートフォンには「大規模停電」の文字。

    窓の外では信号機も消えていた。

    その時だった。

    子どもが何気なく聞いた。

    「今日、ご飯ある?」

    私は返事ができなかった。

    子供がお腹を空かせている画像

    「お母さん、お腹空いた・・・」

    災害で最初に困るのは「食べること」

    地震。

    豪雨。

    台風。

    南海トラフ巨大地震。

    ニュースでは建物ばかり映る。

    しかし、本当に困るのはもっと身近なことだ。

    「今日、何を食べる?」

    停電すると炊飯器は使えない。

    断水すると料理もできない。

    物流が止まればスーパーの棚は空になる。

    災害は突然やって来る。

    そして食卓も突然止まる。

    スーパーの棚が空になっている画像

    空っぽの棚に茫然とする

    「ご飯ある?」に、迷わず「あるよ」と答えるために。

    ▶家族を守る備蓄食を見る

    「非常食はまずい」

    そう思っていた。

    正直に言えば私もそうだった。

    乾いている。

    味が薄い。

    子どもが食べない。

    買っても押し入れに入れたまま。

    だから後回しになる。

    ところが最近の備蓄食はまったく違っていた。

    国産米を使い、

    水だけでも食べられる。

    しかも5年以上保存できる。

    非常食というより、

    「いつものご飯」に近づいている。

    本当に必要なのは「食べられる」ではなく「食べたい」

    災害時は体だけではない。

    心も疲れる。

    そんな時、

    慣れない味ばかりでは食欲も落ちる。

    だから備蓄食は、

    保存期間だけでは選べない。

    子どもが食べられるか。

    高齢の家族でも食べやすいか。

    アレルギーに配慮されているか。

    そこまで考えて初めて、

    「命を守る備え」になる。

    普段使いできる備蓄は、続けられる

    備蓄が続かない理由は簡単だ。

    使わないから。

    最近は、

    キャンプ。

    登山。

    旅行。

    夜食。

    忙しい日の昼食。

    そんな日常でも食べられる保存食が増えている。

    だから賞味期限を迎える前に使える。

    そしてまた買い足す。

    ローリングストックが自然に続く。

    備蓄は「しまうもの」ではなく、

    「暮らしの中で回すもの」に変わり始めている。

    アレルギー対応という、見えない安心

    災害は誰にでも起こる。

    しかし、

    食べられるものは人によって違う。

    卵。

    乳。

    小麦。

    落花生。

    家では避けられても、

    災害時は選べないこともある。

    だからこそ、

    アレルギーに配慮した長期保存食は、

    「あると便利」ではなく、

    「あるから安心」へ変わる。

    備蓄は未来の自分へのプレゼント

    人は、

    「まだ大丈夫」

    と思ってしまう。

    正常性バイアスという、

    誰にでもある心理だ。

    だから備蓄は、

    義務ではない。

    備えなくて後悔した人は、数え切れない

    ▶長期保存できる備蓄食はコチラ

    私が選ぶなら、この条件は外せない

    備蓄食を選ぶなら、私は次の条件を重視します。

    • 国産米を使用していること
    • 5年以上保存できること
    • 水だけでも食べられること
    • アレルギーへの配慮があること
    • 普段のキャンプや旅行でも使えること

    この条件を満たす備蓄食なら、押し入れに眠らせるのではなく、暮らしの中で無理なく備えを続けられます。

    最後に

    笑顔の食卓画像

    災害は、

    食べ物を奪う。

    でも本当に失われるのは、

    「家族に温かいご飯を出せる」という安心なのかもしれない。

    だから私は、

    非常食ではなく、

    “未来の食卓” を買うことにした。

    未来の自分から「ありがとう」をもらおう

    ▶「未来の食卓」を今日から備える


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  • X-DAY 第5話

    X-DAY 第5話

    降下地点

    東京湾。

    夜。

    焦げ跡の前で、

    誰も言葉を発しなかった。

    巨大な円。

    焼け焦げたコンクリート。

    倉庫だけが消えている。

    まるで。

    何かが空から降り立ったように。


    美咲がしゃがみ込む。

    黒く変色した地面を調べる。

    そして顔色を変えた。

    「下からじゃない」

    「上からだ」


    直樹が空を見る。

    曇り空。

    何も見えない。

    だが。

    全員の脳裏には、

    東京湾上空の巨大な影が浮かんでいた。


    「あれか・・・」

    拓也が呟く。


    プレミアムチャージWiFiの通信ランプが点滅している。

    不安定。

    だが生きている。


    「変だな」

    拓也が端末を見つめる。


    「どうした」


    「ここだけ電波が強い」


    全員が顔を上げた。


    「強い?」


    「あり得ない」


    「周囲は死んでる」


    「でもこの真下だけ異常に通信状態が良い」


    美咲が言う。


    「中継局・・・?」


    拓也は首を振る。


    「違う」


    「もっと近い」


    「真下だ」

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    少女の後ろ姿画像

    「何をしてる・・・?」

    指さす少女

    少女が歩き出す。


    焦げ跡の中央へ。


    迷いがない。


    まるで知っているように。


    「ここ」


    少女が指差した。



    調査を始める。


    焦げたコンクリート。


    その一部が溶解していた。


    美咲が言う。


    「千度どころじゃない」


    「こんな熱源見たことがない」



    やがて。


    工具が空洞を叩いた。


    コン。


    全員が止まる。


    空洞。


    地下だ。

    地下発見・・・

    地下発見画像

    コンクリートを外す。


    暗闇。


    地下へ続く階段。



    そして。


    拓也の端末が反応した。


    プレミアムチャージWiFi。


    受信レベル最大。


    「馬鹿な・・・」


    「基地局がある」



    「地下に?」



    「いや・・・」


    拓也の表情が変わる。


    「動いてる」



    「何?」



    「信号源が移動してる」



    全員が凍りつく。


    地下の奥。


    何かがいる。

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    何かがいる

    その時だった。


    遠くで地響きがした。


    低い振動。


    倉庫全体が微かに揺れる。


    そして。


    地下から風が吹き上がった。


    温かい。


    機械の匂い。


    いや。


    もっと異質な何か。



    少女が呟く。


    「降りてきた」



    直樹が振り返る。


    「何が」



    少女は地下を見つめたまま答えた。


    「空から」



    「ここへ」

    UNKNOWN NODE

    その瞬間。


    拓也の端末に、

    これまで見たことのないネットワーク名が表示された。


    UNKNOWN NODE


    接続可能



    誰も動けない。


    地下の奥で。


    何かが起動していた。

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    X-DAYシリーズサムネイル画像
  • トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき

    トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき

    第二話:最初の灰

    1. 6月某日 午前9時12分 ― 東京・新宿

    朝倉悠はリビングの窓を開けた。

    梅雨の湿った空気が流れ込む。

    テーブルには飲みかけのコーヒー。

    テレビでは朝の情報番組。

    娘は学校へ行った。

    息子は保育園。

    妻はパート先へ向かっている。

    いつもと変わらない平日の朝だった。

    窓の外を見ると、空が少し白っぽい。

    (天気悪いな……)

    その程度にしか思わなかった。

    スマホが震える。

    《富士山周辺で噴煙上昇の可能性。気象庁が会見へ》

    悠は苦笑した。

    「また富士山か……」

    何度目だろう。

    富士山の前兆ニュースは。

    結局、何も起きない。

    そう思って通知を閉じた。

    その時だった。

    パサ……

    窓枠に何かが落ちる音。

    パサ……

    もう一度。

    悠は指先でその粒を拾った。

    白く、ざらついている。

    砂ではない。

    雪でもない。

    灰だった。

    胸の奥が、わずかにざわついた。

    指先の灰を眺める男の画像

    9時30分 ― 富士山火山観測センター

    三雲剛はモニターを見つめていた。

    無数の波形が画面を埋め尽くしている。

    「……始まったな」

    助手が声を震わせた。

    「先生、本当に噴火するんですか?」

    三雲は首を振った。

    「違う。」

    数秒の沈黙。

    そして低く言った。

    「もう噴火している。」

    助手の顔から血の気が引いた。

    「風向きは?」

    「東だ。」

    その一言で部屋の空気が凍った。

    東。

    首都圏方向だった。

    午前9時43分 ― 東京・新宿

    悠のスマホが鳴った。

    妻からのメッセージ。

    『ねえ、ニュース見た?』

    『富士山、本当に危ないみたい』

    続いてもう一通。

    『子どもたち、大丈夫かな』

    その文章を見た瞬間、

    悠の胸が重くなった。

    娘の学校。

    息子の保育園。

    いつもなら数分で迎えに行ける。

    だが、もし何か起きたら?

    そんな考えが頭をよぎる。

    慌てて学校のホームページを開く。

    アクセス集中。

    表示されない。

    保育園も同じだった。

    初めて不安が現実味を帯び始めた。

    午前10時02分 ― テレビ速報

    テレビ画面に富士山のライブ映像が映る。

    山頂付近から白い煙が上がっていた。

    司会者が言う。

    「現在、専門家の見解を待っています――」

    その瞬間だった。

    ドンッッッ!!!

    画面が大きく揺れた。

    富士山噴火画像

    巨大な黒い噴煙が空へ突き上がる。

    アナウンサーが言葉を失う。

    「……っ!」

    数秒後、

    震える声が響いた。

    「いま、富士山が噴火しました!」

    「噴煙が急速に上昇しています!」

    「これは……大規模な噴火の可能性があります!」

    噴煙柱は空へ伸び続けた。

    画面の上端を超える。

    「噴煙高度、推定1万メートル!」

    「風向きは東です!」

    「首都圏方向です!」

    悠は立ち上がった。

    テレビの向こうで起きている出来事なのに、

    なぜか自分の家のすぐ近くで起きているように感じた。

    午前10時18分 ― 通信会社本社

    榊原慧は基地局データを見ていた。

    異常値が増えている。

    まだ灰はほとんど積もっていない。

    それでも通信品質は少しずつ悪化していた。

    隣の同僚が笑う。

    「大げさだな。」

    「たかが灰だろ?」

    榊原はモニターから目を離さなかった。

    「違う。」

    そして静かに言う。

    「灰は雪じゃない。」

    「溶けない。」

    「消えない。」

    「積もり続ける。」

    その言葉に、

    誰も返事ができなかった。

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    午前10時35分 ― 東京の街

    悠は外へ出た。

    違和感はすぐに分かった。

    車のフロントガラス。

    街路樹の葉。

    コンビニの看板。

    すべてに白い粉がうっすら積もっている。

    空気もどこか重い。

    空を見上げる。

    青空が消え始めていた。

    スマホが鳴る。

    緊急速報。

    《富士山噴火》

    《首都圏で降灰を観測》

    《不要不急の外出を控えてください》

    周囲がざわめく。

    人々がスマホを見る。

    写真を撮る。

    笑っている人もいる。

    だが悠は笑えなかった。

    娘と息子の顔が浮かんだからだ。

    👇自宅に、持ち運べる電源を置いておくという選択👇


    午前11時00分 ― 灰の雨

    東京に降灰する画像

    空は完全に色を失っていた。

    灰色の幕が東京を覆う。

    テレビでは三雲剛が緊急出演していた。

    「これは灰の雨です。」

    「雪ではありません。」

    「溶けません。」

    「積もれば都市機能は停止します。」

    誰も話さなくなった。

    窓の外を見つめる。

    灰が降っている。

    東京に。

    現実に。

    朝までは、

    ただのニュースだった。

    だが今は違う。

    学校にいる娘。

    保育園にいる息子。

    離れた場所にいる妻。

    守りたい人たちがいる。

    だからこそ分かる。

    これは遠い山の噴火ではない。

    自分たちの生活そのものが、

    静かに飲み込まれ始めているのだと。

    そして誰もまだ知らない。

    本当の地獄は、

    これから始まるということを。

    👇困った時には、もう遅い👇




    トゥモローショック・シリーズサムネイル画像
  • トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき(第一話)

    トゥモローショックⅢ:灰の門が開くとき(第一話)

    『登場人物』

    • 朝倉 悠(あさくら ゆう)  防災系ブログ「未来地図」を運営するライター。 災害史に詳しいが、富士山噴火は“遠い話”だと思っている。
    • 白石 玲奈(しらいし れな)  東京都危機管理局の若手職員。 富士山噴火対策の担当だが、組織の鈍さに苛立ちを抱える。
    • 三雲 剛(みくも つよし)  富士山火山観測センターの火山学者。 「300年の沈黙は異常だ」と警鐘を鳴らすが、世間からは“悲観論者”扱い。
    • 榊原 慧(さかきばら けい)  大手通信会社のネットワークエンジニア。 富士山噴火時の通信障害を恐れているが、会社は「想定外」で片付ける。

    第一話:静かすぎる山

    1. 2026年6月、東京・新宿

    夜の湿気がまとわりつく。 朝倉悠は、スマホに届いたニュース速報を見て足を止めた。

    《富士山周辺で低周波地震が増加。気象庁「現時点で噴火の兆候はない」》

    「またか……」

    富士山の“前兆ニュース”は、もはや季節の風物詩。 だが、この夜はなぜか胸の奥にざらつくものが残った。

    2. 富士山火山観測センター・三雲の焦り

    モニターを見つめる二人の男の画像

    山梨県。 三雲剛は、モニターに映る波形を見つめていた。

    「……増えている。明らかに。」

    低周波地震。 マグマが地下で動くときに発生する“火山の胎動”。

    助手が声を震わせる。

    「三雲先生、これは……?」

    三雲は静かに答えた。

    「富士山は平均30年に1度噴火してきた。それが300年以上も静かだ。 これは“異常な静けさ”なんだ。 次が来てもおかしくない。」

    研究室の空気が一瞬で冷えた。

    3. 東京都危機管理局・玲奈の苛立ち

    都庁の会議室。 白石玲奈は、資料を叩きつけるように机に置いた。

    「宝永噴火規模なら、東京23区で10センチの降灰です。物流は止まり、停電は3600万人規模。首都機能は麻痺します。避難計画の見直しが必要です!」

    しかし上司は眉をひそめた。

    「玲奈くん、そんな“最悪の想定”を出したらパニックになる。  まずは“現実的な範囲”で考えよう。」

    玲奈は唇を噛んだ。

    (現実的……?  富士山噴火は“国難級”だって国が言ってるのに……)

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    4. 通信会社・榊原の不安

    深夜のオフィス。 榊原慧は、富士山噴火時の通信シミュレーションを見ていた。

    「降灰3センチで基地局の絶縁低下……  10センチで大規模停波……  30センチで復旧不能……」

    上司は笑って言った。

    「そんなの起きないよ。富士山なんて300年噴火してないんだ。」

    榊原は呟いた。

    「……だから怖いんですよ。」

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    5. そして、静寂が破れる

    霞み始めた東京の画像

    翌朝。 朝倉悠のスマホが震えた。

    《富士山・山頂直下で低周波地震が急増。専門家「数日以内に噴火の可能性も」》

    画面には三雲剛の顔が映っていた。

    「極端な話、明日噴火してもおかしくない。富士山は“若い火山”だ。活動は終わっていない。」

    悠は息を呑んだ。

    その瞬間、 東京の空に、かすかな灰色の霞が漂い始めていることに、 まだ誰も気づいていなかった。


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  • 【文明崩壊クロニクル:ポンペイ篇・後編】

    【文明崩壊クロニクル:ポンペイ篇・後編】

    ——灰の夜を越えて、文明は静かに消えていく

    ■ 灰の降り始めた街で、私は夜を迎えていた

    夕暮れから、私はずっとポンペイの街にいた。

    空を覆う噴煙はさらに広がり、 街の灯りは灰の幕にかき消されつつある。

    人々はまだ、 「少し煙が多いだけだ」 「また地鳴りが続いているだけだ」 と、日常の延長として受け止めていた。

    だが私は知っていた。

    この静けさが、文明の最期の夜へと変わることを。

    ■ 灰の雨──静かに積もる“終わりの気配”

    夜が深まるにつれ、 空から細かな灰が降り始めた。

    最初は雪のように軽く、 やがて砂のように重くなる。

    屋根は白く染まり、 街の灯りはぼんやりと滲み、 人々の足音だけが灰を踏みしめて響いていた。

    「家に入れ!」

    「窓を閉めろ!」

    叫ぶ声はある。 だが、まだ誰も“逃げる”という選択をしていなかった。

    崩壊は、いつも静かに始まる。

    ■ 崩れ落ちる屋根──積み重なるひずみの結末

    深夜。 灰の重みで、最初の屋根が崩れた。

    ドン、と鈍い音が街に響く。 続いて、別の家でも、また別の家でも。

    私はその音を聞きながら、 17年前の大地震で傷んだ建物が、 修復されないまま残っていたことを思い出していた。

    文明は、 強い部分からではなく、 弱った部分から壊れていく。

    それは、どの時代でも同じだ。

    ■ 逃げ惑う人々──それでも間に合わない

    視界は灰で白く濁り、 足元さえ見えない。

    子どもを抱えて走る母親。 家財を持ち出そうとする老人。 互いを呼び合う声が、灰の中に吸い込まれていく。

    私は観察者であり、 同時に“生存者”でもあった。

    この街の誰かと同じように、 ただ灰の中を歩き、 ただ崩壊の音を聞き続けるしかなかった。

    ■ 火砕流──文明を一瞬で消す“死の風”

    火砕流画像

    そして、翌朝。

    山が、ついに牙をむいた。

    轟音。 大地が震える。 空気が焼ける。

    火砕流が山腹を駆け下り、 街へ向かって一直線に迫ってくる。

    それは炎ではなく、 時速100kmを超える灼熱の爆風だった。

    逃げる時間はない。 叫ぶ暇もない。

    ただ一瞬で、 街も、人も、文明も、 すべてが飲み込まれた。

    私はその熱風の中で、 “観察者”としての存在に救われた。

    だが、胸の奥に焼き付いた光景は、 今も消えない。

    ■ 抱き合う二人──永遠に閉じ込められた時間

    灰の中で寄り添うように倒れた二人。

    恐怖ではなく、 互いを守ろうとするような静かな姿勢。

    後に石膏像として発見される 「抱き合う二人」 の姿は、 この街の最期を象徴している。

    文明が崩れる瞬間、 人は誰かと寄り添おうとする。

    それは、 時代が変わっても変わらない “人間の本質”なのだと思った。

    噴火後のポンペイ画像

    ■ 街が眠りにつく──そして現代へ

    ポンペイは灰に覆われたまま、 1700年以上眠り続けた。

    家々の壁画も、 パン屋の窯も、 市場の落書きも、 人々の最期の姿も。

    すべてが、 「その瞬間のまま」閉じ込められていた。

    それは、文明が崩壊する瞬間を これ以上ないほど鮮明に残した、 世界でも稀な“時のカプセル”だった。


    ■ エピローグ──ポンペイが現代に残したメッセージ

    私は時空の裂け目を閉じ、 現代へ戻ってきた。

    胸の奥に残ったのは、 恐怖ではなく、 ひとつの確信だった。

    文明は、静かに壊れる。

     しかし、静かに守ることもできる。

    ポンペイの物語は、 過去の悲劇ではなく、 現代への警告であり、 未来へのヒントでもある。


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  • 傘を忘れた日

    傘を忘れた日

    怠惰

    私は朝、傘を持たなかった。

    天気予報は雨であった。

    それもかなりの確率で降るらしかった。

    けれども私は持たなかった。

    理由を尋ねられると困る。

    特別な理由などなかったからである。

    ただ面倒だったのである。

    人間の行動を支配しているものは、案外大きな思想ではない。

    多くの場合、それは小さな面倒臭さである。

    私はそのことをよく知っていた。

    そして知っていながら負けるのであった。

    百年に一度の雨

    会社へ向かう電車の窓から空を見ると、雲は重そうであった。

    近頃の雲はどこか信用がならない。

    昔の雲は空に浮いていた。

    今の雲は空そのものになろうとしている。

    私は時々そんな気がする。

    もっとも、そう考えるのは私が年を取ったせいかもしれない。

    若い社員などは平気な顔で言う。

    「最近また線状降水帯が増えましたね」

    まるで季節の挨拶でもするように。

    私はその言葉を聞くたびに少し不思議になる。

    線状降水帯。

    記録的豪雨。

    観測史上最大。

    百年に一度。

    その百年に一度というやつが、近頃は随分忙しい。

    毎年のように顔を見せる。

    百年に一度も安売りされたものである。

    雨宿り

    屋根の下で雨宿りする人の画像

    午後になると窓の外が暗くなった。

    照明の光が妙に白かった。

    遠くで雷が鳴った。

    誰かが空を見上げた。

    しかし仕事は続いた。

    人間というものは、世界が終わる直前まで会議をする生き物かもしれない。

    夕方。

    私は会社を出た。

    そして立ち止まった。

    雨が降っていた。

    いや、降っていたという表現は少し違う。

    空が崩れていた。

    水が落ちていた。

    道路も建物も信号機も、みな同じ灰色に沈んでいた。

    私は駅まで歩こうとした。

    だが三歩で諦めた。

    濡れるとか濡れないとかいう段階ではなかった。

    水の中へ出ていくような気分だった。

    私は軒先に立った。

    そこには同じような人間が何人もいた。

    皆、空を見ていた。

    誰も怒っていなかった。

    誰も騒いでいなかった。

    しかし少し困っていた。

    そしてその困り方が、どこか私と似ていた。

    雨はしばらく止まなかった。

    私は退屈した。

    雨のニュース

    スマートフォンを眺めた。

    ニュースが流れていた。

    豪雨。

    冠水。

    運転見合わせ。

    避難情報。

    近頃のニュースは雨の話ばかりである。

    昔は台風が来ると大騒ぎだった。

    今は普通の雨が大騒ぎを連れて来る。

    世界の方が変わったのか。

    それとも私が遅れているのか。

    その区別は案外難しい。

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    古い傘

    帰宅したのは夜だった。

    濡れた靴を脱ぎながら私は思った。

    明日も雨らしい。

    私は押し入れを開けた。

    奥から折りたたみ傘が出てきた。

    古い傘であった。

    重かった。

    骨も少し曲がっていた。

    私はそれを眺めた。

    そして何となく閉じた。

    新しい傘で、世界が変わった

    傘をさし去っていく男の画像

    翌週。

    私は新しい傘を買った。

    必要に迫られたというより、

    ようやく観念したのである。

    世界は変わった。

    それを認めるしかなかった。

    届いた傘は驚くほど軽かった。

    手に持っている気がしなかった。

    私は少し拍子抜けした。

    今まで傘とは重いものだと思っていた。

    重いから持たない。

    持たないから濡れる。

    濡れるから後悔する。

    私はその妙な循環の中にいたのである。

    数日後。

    また雨が降った。

    私は傘を開いた。

    風が吹いた。

    しかし傘は静かだった。

    私は歩いた。

    濡れなかった。

    ただそれだけのことであった。

    だが不思議なことに、

    その日の私は少し機嫌が良かった。

    人生には、

    持っているだけで安心するものがある。

    そして安心というものは、

    案外軽いところに宿るらしい。

    雨は相変わらず激しく降っていた。

    けれども私はもう空を恨まなかった。

    世界は変わった。

    しかし人間は、

    少しずつ変わればそれで十分なのである。

    私は傘を肩に担ぎながら歩いた。

    久しぶりに、

    雨の日が嫌いではなかった。

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    トゥモローショック第2話サムネイル画像
  • 最後の一滴は昨日だった

    最後の一滴は昨日だった

    私は近頃の雨があまり好きではない。

    好きではないというよりも、むしろどこか信用できないのである。

    子供の頃にも雨は降った。

    降ったには違いない。

    しかし今の雨は、昔私が知っていた雨とは少し性質を異にしているように思われる。

    昔の雨は空から落ちて来た。

    今の雨は空そのものが崩れて来る。

    そう言えば大袈裟に聞こえるかもしれぬが、窓硝子を叩く音を聞いていると、私は時々そんな気になるのである。

    その朝も雨であった。

    しかも尋常の雨ではなかった。

    私は起き抜けに携帯電話を開いた。

    会社から通知が届いていた。

    臨時休業

    「本日は大雨のため臨時休業とします。」


    私はその文面をしばらく眺めた。

    雨で会社が休みになる。

    理屈としては理解できる。

    しかし感情の方が追いつかない。

    私の中には、会社というものは多少の風雨ではびくともしない存在だという古い観念が残っていたのである。

    だから私はその通知を見た時、

    雨そのものよりも先に、

    世の中の方が変わってしまったのではないかという気持になった。

    私は珈琲を飲もうと思った。

    台所へ行って蛇口をひねった。

    水は出なかった。

    私はもう一度ひねった。

    やはり出なかった。

    三度目も同じであった。

    出ないことは最初から分かっていたのである。

    それにもかかわらず私は蛇口をひねり続けた。

    人間は時々、

    理解することと承知することとの間に深い溝を持っている。

    私はその溝を埋めようとしていたのかもしれない。

    やがて携帯電話の速報が目に入った。

    広域断水発生

    広域断水発生


    たったそれだけの文字であった。

    しかし私は妙な気持になった。

    部屋の中は何も変わっていない。

    電気はつく。

    冷蔵庫も動いている。

    通信も生きている。

    それなのに、

    何か大事なものだけが静かに抜き取られたような感じがした。

    私はその日、

    幾度も蛇口を見に行った。

    行くたびに結果は同じである。

    しかし人間というものは、

    受け入れたくない事実ほど何度も確かめたくなるものらしい。

    夜になった。

    私は近所の店へ出かけた。

    棚に並んでいたはずの水は消えていた。

    皆、黙っていた。

    騒ぐ者もいなければ怒鳴る者もいない。

    けれども、

    その沈黙はどんな喧騒よりも不安であった。

    私は家へ戻った。

    そして深夜、

    便所の前で立ち止まった。

    流せなかったのである。

    たったそれだけのことであった。

    しかし私はその時、

    文明というものがいかに薄い膜の上に成り立っているかを知った。

    人間は強い生き物だとよく言う。

    私はそうは思わない。

    人間は便利な生き物なのである。

    便利さに慣れた生き物なのである。

    だから便利さが失われた時、

    自分でも驚くほど簡単に心細くなる。

    最後の一滴は、いつ?

    夏目風の人物が窓の外を見ている画像

    私は携帯電話を開いた。

    以前見た防災用品の記事を思い出したからである。

    簡易トイレ。

    凝固剤。

    備蓄用品。

    その時の私は、

    そんなものを必要とする日は来ないだろうと思った。

    いや、

    正確には必要になる可能性を考えたくなかったのである。

    人間は危険を知らないのではない。

    知りたくないだけである。

    私は画面を見つめた。

    もし昨日の私なら、

    また閉じていたかもしれない。

    「そのうち考えよう」

    そう言って。

    そして今日の私になったのである。

    失ってから価値を知る。

    これは人間の古い癖である。

    翌朝になっても雨は止まなかった。

    私は窓の外を見た。

    灰色の空が低く垂れ込めている。

    その向こうに何があるのか分からない。

    しかし一つだけ分かることがあった。

    備えとは何かを得るためのものではない。

    失わないためのものなのである。

    安心。

    尊厳。

    平穏な日常。

    そういう名前のついたものを守るためのものである。

    私は再び蛇口を見た。

    相変わらず水は出なかった。

    けれども、

    本当に失われたものは水ではなかった。

    自分だけは大丈夫だろうという、

    根拠のない安心であった。

    最後の一滴は今朝ではない。

    昨日だったのである。

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    なぜ断水で最初に困るのはトイレなのか

    多くの人は、

    災害が起きるとまず飲み水を思い浮かべます。

    もちろん水は重要です。

    しかし実際に断水を経験した人が最初に困ること。

    それがトイレです。

    人は1日に平均5〜7回トイレを利用します。

    家族4人なら、

    1日で20回以上。

    断水すると、

    水洗トイレは機能しなくなります。

    さらにマンションでは、

    下水設備への影響から流してはいけないケースもあります。

    つまり、

    「水がない」

    より先に、

    「トイレが使えない」

    が始まるのです。

    簡易トイレ選びで失敗しない3つのポイント

    ① 凝固剤の性能

    重要なのは吸水量ではありません。

    臭いと衛生管理です。

    長期間保管する可能性を考えると、

    凝固剤の品質は非常に重要です。


    ② 保存期間

    災害は明日来るとは限りません。

    5年保存より、

    10年以上保存できる製品が理想です。


    ③ 数量

    3日分では足りません。

    1人35〜50回程度を目安に考えましょう。

    4人家族なら、

    最低でも150回分前後あると安心です。

    普段使いから非常時まで。フェーズフリーな防災グッズ専門ブランド【スツーレ】

    編集部おすすめ簡易トイレ比較【2026年版】

    用途おすすめ
    総合力重視スツーレ
    コスパ重視アイリスオーヤマ系
    防臭重視BOS非常用トイレ

    総合おすすめ

    スツーレ』

    こんな人向け

    • 家族で備えたい
    • 初めて防災用品を買う
    • 自宅避難を想定している

    特徴

    • 防災士監修
    • 防災グッズ大賞受賞
    • 簡易トイレ以外も揃う
    • テントや凝固剤まで一括で準備可能

    「何を選べばいいか分からない」

    という人に最も向いているタイプです。


    コスパ重視

    『アイリスオーヤマ系非常用トイレ』

    こんな人向け

    • とりあえず備えたい
    • 費用を抑えたい

    まず持つことを優先するなら有力候補です。


    防臭重視

    『BOS非常用トイレ』

    こんな人向け

    • マンション住まい
    • 臭い対策を重視する

    長期間保管を想定する場合に安心感があります。


    編集後記

    人は何かを手に入れるためよりも、

    何かを失いたくないために動く。

    防災もまた同じである。

    簡易トイレは便所の代用品ではない。

    平穏な日常を失わないための保険である。

    そして保険というものは、

    必要になってからでは遅いのである。

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