南海トラフ巨大地震 ― 白い非常灯の下で

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第二話 「途絶えた世界」

※この物語はフィクションですが、南海トラフ巨大地震の最新想定(2025年)を参考に、実際に起こり得る災害医療の状況を描いています。

1 終わらない揺れ

病院はまだ揺れていた。

棚から落ちた医療器具が床を転がり、非常灯だけが白く廊下を照らしている。

「余震……ですか?」

新人看護師・優菜が震える声で尋ねた。

美咲は患者のベッドを押しながら首を横に振る。

「まだ終わってない。」

「南海トラフ巨大地震なら……ここから始まるかもしれない。」


2 南海トラフ巨大地震とは

階段を上りながら、美咲は静かに話し始めた。

「南海トラフっていうのは、日本の太平洋側にある長い海底の溝のこと。」

「その下では、フィリピン海プレートが陸のプレートの下へ、毎年少しずつ沈み込んでいるの。」

優菜は黙って聞いている。

「長い年月をかけて、ものすごい力がたまる。」

「そして限界を超えた瞬間、一気に動く。」

「それが南海トラフ巨大地震。」

また病院が揺れた。

天井の照明がきしみ、どこかでガラスの割れる音が響く。


3 なぜ日本最大級の災害と言われるのか

「普通の地震は、一つの断層が動くことが多い。」

「でも南海トラフ巨大地震は違う。」

「震源域は静岡県沖から宮崎県沖まで広がる可能性がある。」

優菜は息をのんだ。

「そんなに広いんですか……。」

「だから病院だけじゃない。」

「消防も、警察も、自衛隊も、自治体も、同時に被災する。」

「助けに来ないんじゃない。」

「助けに来られない。」

その言葉が、廊下の静けさに重く沈んだ。


4 病院という孤島

院内放送が流れる。

「断水を確認。」

「通信障害発生。」

「エレベーター復旧見込みなし。」

外の様子は誰にも分からない。

救急車も来ない。

家族とも連絡が取れない。

病院は、まるで街から切り離された島になっていた。

美咲はスマートフォンを見る。

圏外。

何度かけ直しても、

『通信できません』

その表示だけが繰り返される。

「災害対策本部とも連絡が取れません!」

ナースステーションに緊張が走った。

そのときだった。

事務職員が小さなケースを抱えて駆け込んできた。

「防災備蓄の通信機器です!」

ケースの中に入っていたのは、

買い切り型のチャージ式ポケットWiFiだった。

普段は倉庫で保管されているだけの端末。

月額契約はなく、

必要なときだけ通信容量をチャージして使えるよう備えていた。

「ギガは残っています!」

電源を入れる。

数十秒後。

「つながった!」

誰かが叫んだ。

病院中の空気が変わる。

災害対策本部から届いた最初の情報。

『巨大津波警報発令。沿岸部は直ちに高所へ避難してください。』

たった一文。

それだけで病院全体が動き始めた。

美咲は小さく息を吐いた。

水がなければ生きられない。

食べ物がなければ動けない。

でも――

情報が届かなければ、命を守る判断すらできない。

通信は、

人と人をつなぐだけではない。

命と命をつなぐものなのだ。

電話繋がらない看護師の画像

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5 次に来るもの

「揺れだけなら、まだいい。」

ベテラン看護師がぽつりと言った。

優菜が振り返る。

「え……?」

「南海トラフで本当に怖いのは、このあと。」

病院は海から数キロしか離れていない。

もし巨大津波が来れば、避難できない患者もいる。

静まり返った病棟。

聞こえるのは、非常灯のかすかな電子音だけ。

その静けさが、かえって恐ろしかった。

6 赤い海

津波を見る看護師たちの後ろ姿画像

窓の外から、誰かの悲鳴が聞こえた。

「海だ!!」

美咲たちは窓へ駆け寄る。

遠くの水平線。

海が、

異様なほど遠くまで引いている。

「……嘘。」

美咲の背中を冷たい汗が流れた。

教科書でしか見たことのない光景。

海が、

巨大なエネルギーをため込むように、

静かに姿を変えていた。

その静寂の向こうから、

誰も見たことのないものが近づいてくる。

災害で止まるのは電気だけではありません。通信が途絶えると、避難情報や家族との連絡も難しくなります。月額不要・買い切り型で、必要なときだけギガをチャージできるポケットWiFiという備えも選択肢の一つです。

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