通信障害発生から48時間。
東京。
巨大な影は、
まだ空に浮かんでいた。
動かない。
攻撃もしない。
ただそこにいる。
しかし。
人が消え始めていた。
行方不明

駅前には張り紙が並んでいた。
家族を探しています
父を探しています
娘が帰ってきません
見かけた方は連絡を
行方不明者。
急増。
警察も把握できていない。
通信障害。
交通混乱。
情報不足。
誰がどこにいるのか、
誰にも分からなくなっていた。
その時だった。
謎の少女

「見えるの?」
直樹は振り返った。
少女だった。
白いパーカー。
長い黒髪。
不思議なほど、
周囲に溶け込んでいない。
「あれ」
少女は空を指差した。
巨大な影。
「みんな見てるだろ」
直樹は言った。
少女は首を振る。
「見てるだけ」
「誰も気づいてない」
その言葉が、
なぜか気になった。。
消えた会社員
その夜。
ニュースが流れる。
男性会社員。
42歳。
三日前から行方不明。
最後の目撃情報。
東京湾沿い。
深夜。
空を見上げていた。
それだけ。
直樹はテレビを見ながら笑った。
「偶然だろ」
だが。
三人目
翌日。
四人目。
七人目。
十二人目。
行方不明者が増えていく。
そして共通点が見つかる。
全員。
消える直前、
空を見ていた。
巨大な影を。
少女がまた目の前に
SNSは使えない。
通信は不安定。
情報は錯綜。
デマ扱いされる。
陰謀論扱いされる。
誰も本気にしない。
少女だけが言う。
「もう始まってる」
「何が」
「回収」
直樹は聞き返した。
だが少女は答えない。
消えた男
その夜。
拓也から連絡が入った。
珍しく焦っていた。
「直樹」
「知り合いが消えた」
「え?」
「昨日まで連絡してた」
「今日いない」
「電話も繋がらない」
「家にもいない」
直樹は黙った。
笑えなかった。
もう何人目か分からない。
生きていた

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翌朝。
拓也がバッグを開く。
取り出したのは、
プレミアムチャージWiFi。
「全部じゃない」
「でも生きてる回線がある」
通信開始。
自治体サーバー。
非常用ネットワーク。
断片的な通信。
そして。
一つの映像が届く。
ノイズだらけ。
乱れた画面。
暗闇。
男が映っている。
消えたはずの会社員だった。
「聞こえるか……」
映像が揺れる。
男の顔は恐怖で歪んでいた。
「ここはどこだ……」
「誰かいる……」
「助けてくれ……」
背後で、
何かが動く。
映像が激しく乱れる。
そして。
最後に映った。
窓のようなもの。
その向こう。
東京の夜景。
だが。
位置がおかしい。
高すぎる。
ありえない高さ。
まるで。
空の上から見ているようだった。
通信は途切れた。
沈黙。
誰も喋れない。
直樹は少女を見る。
少女は窓の外を見ていた。
巨大な影。
そして小さく呟く。
「まだ生きてる」
「助けられる」
「今なら」

最後
直樹は聞いた。
「お前は何者なんだ」
少女は振り返る。
初めて少し笑った。
「それは」
「まだ早い」
風が吹く。
次の瞬間。
少女はいなかった。
どこにも。
まるで最初から存在しなかったように。
空には、
巨大な影。
そして直樹は初めて思う。
あれは本当に、
ただ浮かんでいるだけなのか?


